≪THE COVE(入り江)≫
という映画を見ました。
《THE CORE(コア)》という似た名前の映画も以前見たことはありましたが、それは地球の中心部分(コア)に向かって探検して、人類を絶滅の危機から救おうとするSF物語でした。
今回見たザ・コーブというのはノンフィクションで、現実にこの世界で起きている事件を記録したドキュメント映画でした。
とても良さそうな映画だという噂は耳にしていましたが、ようやく念願かなって見ることが出来ました。
ぜひたくさんの方々に見ていただきたいという感想を持ちました。
素直に感動するお話です。
映画自体はとてもすばらしいドキュメンタリーもので、いろいろと考えさせられることもあり、強く印象に残りました。
イルカちゃんたちの可愛らしさと、それを必死になって助けようとする主人公たちのいろんな意味でのギリギリな『行動』を見ると、いかに自分の存在が小さく頼りないものかを痛感いたします。
海の天使みたいなイルカちゃんたちをはじめ、愛嬌ある可愛らしい動物たちは人間の心を癒してくれている大切な存在なのです。
それぞれの地域や時代によって動物たちは、かけがえのない家族であったり信頼できる仲間であったり、心を共有する友であったり、単なる家畜やペット以上に身近な存在である場合もあります。
特にイルカという生き物はとても賢く、自己認識能力があるということです。
同一種族間において、自己と他者の区別をはっきりと理解し、自己同一性を確立するというのは、はるかに高等な生物個体であるとされています。
古代ギリシャでは、イルカを傷つけることが、大変に重い罪であると定められていたそうです。
人間を、イルカが自ら進んで、死の危険から救う動物であるということが確認されたためです。
実際に、現代においても、イルカが人の命を救ったことは、多数報告されています。
しかし、
この日本において、イルカは年間に二万三千頭が殺されているそうです。
一年で二万三千頭・・・・・。
「わんぱくフリッパー」というアメリカのTV番組の大ヒットにより、イルカは全世界でも大人気となりました。
そしてそれ以来、ショービジネスの道具として、イルカたちは利用されるようになっていきました。
生け捕りにしてつかまえたいきのいいイルカは、一頭が一千万円以上で取り引きされています。
映画の物語の主人公であるリックは、わんぱくフリッパーの恩恵で巨万の富を築き上げたのですが、あるきっかけにより、イルカ解放運動の活動家になります。
フリッパー役のイルカであったキャシー(リックの可愛がっていたイルカ)が、彼の見ている目の前で、自らの命を絶ってしまったのです……。
テレビドラマシリーズの撮影も終わり、フリッパーを演じてくれたイルカたちは、水族館に引き取られることになりました。
しばらくしてリックは、自分のことを親と子みたいに慕ってくれていたキャシーのもとを訪れます。
キャシーは、撮影や訓練やプライベートでも、リックに対しては、『パパ。』と呼んでなついてくれていたのです。
イルカの唇の動きだけで、それを表現するのはすごく難しいような感じもしますけど、本人たちはそれで意志疎通が出来ていたのでしょう。
水族館の水槽ごしに見えたリックに対し、キャシーは最後に『パパ。』と呼んだきり、二度とその場を離れようとはしませんでした。
イルカの聴覚はとてつもなく発達しており、遠くの場所のかすかな音も聞こえるのですが、イルカショーを見る観客の声などには、とてつもなくストレスを与えることになります。
あまりに繊細な特殊能力としての聴覚のせいで、イルカショーに出るイルカたちは、ほとんどが発狂して早死にしてしまうそうです。
キャシーはなぜあの時、空気を吸うために水面に上がらなかったのか?
パパに会えた嬉しさに、もう二度とあんなイルカショーのストレスを味わいたくなくて、大好きなパパと永遠に一緒にいたかったのか?
リックはキャシーの死の直後、最初の『行動』を実行します。
捕らえられているイルカたちを、網を破って海に逃がし、警察に逮捕されます。
その後も、彼や彼自身の意志を受け継ぐ者により、世界中の各地でその『行動』が繰り返されています。
しかし、どれだけ大きな声で叫んでも、イルカという高額商品の需要がある限り、彼らの『行動』は常に命の危険と隣り合わせです。
キャシーはあの時、リックに対して『パパ、助けて』と言っていたのでしょうか?
リックには、このように聞こえたのかもしれません。
『パパ、世界中のイルカを助けて。』
物語の舞台は、日本の和歌山の太地(たいじ)という小さな町にある、入江です。
動物愛護の映画でもありますが、人間がどのようなことをきっかけとして大きく変わるのか、というテーマも感じさせる映画でした。