平八郎の鑑定を待っている間、ヤココは至福のコーヒータイムを楽しみ、
マロばぶは束の間の“ごちそうタイム”を楽しんでいます。
平八郎は、ほとんどの時間、楽しいことや面白いこと、感謝できることなど、気分の良くなる前向きなことばかり考えているので、マロばぶにとっては、ここは滅多にない“ごちそう”の宝庫なのです。
久しく来ていなかったので、そこら中に平八郎の思考がこぼれ落ちていて、あちこち探し回らなくても、
マロばぶは美味しい食事にありつける、というわけです。
それに、さっきの平八郎の“感動”や、“ヤココに対する感謝の気持ち”もこぼれ落ちていますから、尚更です。
しあわせそうにむしゃむしゃするマロばぶを眺めて、ヤココも嬉しそうに笑っています。
『まぁた、たくさん宝石や純金が生まれそうだねぇ』
ケラケラと笑っていると、ガチャ、と奥の扉が開いて、平八郎がニコニコしながら戻ってきました。
『毎回、マロちゃんが生み出すものは本当に素晴らしいね。おしりから出てきたなんて、いつも信じられんくらいさ…今回もかなりの金額になりそうだよ、ヤコちゃん』
『ハハッ、そうかい、そうかい。…それじゃ、その中から20万ほど、いただこうかね。残りは、寄付しておいておくれ』
『それだけでいいのかい?』
ヤココがうなずくと、平八郎はまた奥の部屋へ行きました。
☆
ヤココは、こうしてマロばぶとオカメちゃんから集まった金銀財宝を平八郎に売りに来ては、
売り上げのほんの一部だけ受け取って、残りの売り上げを全て寄付するのです。
行先は様々ですが、平八郎が吟味して真剣に選んで寄付しています。
ヤココは平八郎だから、信頼して全てを任せているのです。
ちなみに、マロばぶから生まれた宝石や天然石は、密かに富豪たちの間で人気があり、それを目当てに平八郎を尋ねる人も増え続けています。
その唯一無二の美しさ、ユニークさの虜になり、お金に糸目はつけない、という富豪も少なくありません。
そして、そのお金は平八郎がたくさんの人の喜びに繋がるような使い方をされるため、
平八郎から買うといいことがあったり、収入が上がる、会社の業績が上がる、事業規模が拡大する、などの大きな良き影響が連鎖し続けています。
豊かさが、循環し続けているのです。
関わる全ての人に満足や幸せ、喜びが連鎖する・・・これこそ、終わりなき愛の循環、豊かさの循環です。
☆
平八郎が、お金の入った封筒を持って戻ってきて、ヤココに手渡します。
『平さん、いつも世話になるね。ありがとう』
ヤココが軽くお辞儀をして言いました。
『そりゃ、こっちのセリフだよ。おれの方が、いつもたっぷり貰っちまって…』
慌てて平八郎が言い返します。
『いいや、お互い様だよ!』
ヤココが気持ちよく言いました。
『そうだ、今日のお代と、いつものコーヒーと紅茶、緑茶もわけとくれ』
そう言って封筒の中からお金を差し出しました。
『お代なんていらねーよ!それ以上に貰ってんだから、それくらいはさせてくれよ、な』
平八郎は手をぶんぶんと振りながらそう言うと、せっせとコーヒーの粉と紅茶の茶葉、緑茶の茶葉を手際よく梱包していきます。
それらを紙袋の中に丁寧にしまうと、思い出したように、一番上に新品のコーヒーフィルターを入れて、
きちっと封をして、手提げ袋に入れました。
『ほい、おまたせ。フィルターも入れといたからな』
『あれま、こんなに…ありがとね』
ヤココはずっしりと商品が入った手提げ袋を受け取ると笑顔で言いました。
『じゃ、これから買い物にいってくる。また、よろしく頼むよ、平さん』
『ああ、いいもんいっぱい買うんだぞ、ヤコちゃん。こっちこそ、また頼むよ。マロちゃんの宝石は人気なんだ』
『…だってさ、マロばぶ、良かったね。じゃあね!』
帰りたくなさそうなマロばぶに跨って、ヤココは笑顔で手を振りました。
平八郎も、笑顔で手を振り、のそのそと宙を歩くマロばぶとヤココの後ろ姿に、深くお辞儀をしました。
そして、マロばぶとヤココが見えなくなるまで、ずっと見送っていました…。
☆
それから、ヤココたちは人目につかないように町のスーパーの裏側にそーっと着地して、マロばぶを物陰に隠して、スーパーでお買い物をしました。
ヤココは滅多に買い物をしませんが、お金を使うのが大好き。
金銭感覚がぶっ飛んでいるので、たまにこうしてお買い物をするときは思い切り、気持ちよく、楽しくお金を使います。
今日は食料品が主ですが、お洋服、アクセサリー、帽子、雑貨、靴など、何を買うときにも気前よく、思い切りよくお買い物します。
見ていて、清々しいほどです。
常に直感で動いているのと、自分の気持ちに正直なので、ほとんど迷うこともありません。
ですので、気持ちいいくらい速いのです。
それに加えて、ヤココは値切ることが大嫌い。多く払うことはあっても、絶対に値切りません。
なぜなら、ヤココは大きな大きな豊かさの流れ、無限の豊かさが流れていることを、知っているから。
マロばぶは宝石や純金を産み続けるし、オカメちゃんもたくさんの豊かさを運んでくれます。
もし、それがなくなったとしても、自分には何かしらの形で、永遠に、限りない豊かさが必ず流れ込んでくる。必ず、どこからか運ばれてくる。それを、確信しているのです。
だから、心から楽しくて、お買い物が喜びでいっぱいで、とんでもなくスムーズなのです。
きっと、タカラマミーヤココの豊かさの流れの中に加われた人や、ものや、お金や、
様々なものぜ~んぶが、しあわせです。
余談ですが、マロばぶが現れる前は、ヤココの実家であるオハナバターエココのお城の庭に、
立派な「金のなる木」があって、その木にお金が実っていたので、お金はいつも豊かにありました。
タカラマミーヤココの母であるオハナバターエココが亡くなると間もなく「金のなる木」は枯れたのですが、その後すぐに、どこからともなくマロばぶが現れて、オカメちゃんが生まれたので、ヤココは豊かさから逃れられたことは一度だってありません。
☆
あっという間に大きな袋を3つほど抱えたヤココがマロばぶのところへ帰ってきました。
マロばぶは退屈そうにひとつあくびをして、耳のところを後ろ足で掻き搔きしています。
『さぁ、みんなお腹すかして待ってるよ、帰ろうマロばぶ』
そう言って、持ってきていた紐でササっとマロばぶの背中に荷物を固定して、
自分もマロばぶの背中に跨ります。
『ナァ~~ン、ニャ』
よ~いしょ、とでも言うように鳴いて、マロばぶがふわっと浮かび上がり、珍しく空を駆けるように、ヤココの城に向かって一直線に飛びました。
『マロばぶ、なんだい、今日はいつもより速く飛ぶんだね。Tのことでも恋しくなったのかい』
そう言って、ヤココがくつくつと笑います。
『Tの大好物のジュースと、菓子パンもたっぷり買ったからねぇ。きっと喜ぶね。』
『ナーーーーゥ』
マロばぶも、心なしか嬉しそうに鳴いたようでした。
☆
城に戻り、玄関を開けるや否や、大きな声でヤココが言いました。
『おーーーーい、帰ったよ~~~!たくさん買ったから、荷ほどき手伝っとくれ~』
その声を聞いた急須の魔人が素早く急須からぴょこっと顔を出します。
少しだけ、目をキラッとさせて、急須から飛び出し、風のように玄関へ向かいます。
『ただいま』
ヤココはそう言って、急いで出迎えてくれた急須の魔人Tの姿を見て微笑みました。
魔人Tはすぐさま、マロばぶの頭に飛びつき、おでこを撫でてやっています。マロばぶも大喜びでゴロゴロと喉を鳴らしています。
『あんたの大好物もいっぱい買ってあるよ。さ、さっさと台所で荷ほどきしちまおう』
そう言って台所へ向かいました。
大きなテーブルに、大きな買い物袋を3つどーんと置くと、
子どものようにガサゴソと中身を物色していく急須の魔人T。
その様子にけたけたと笑いながら、せっせと買ったものをあるべき場所へと整理するヤココ。
マロばぶは役目を終えて、お気に入りのソファで大あくびをして、今にも寝てしまいそうです。
買ったものの整理が全て終わるころには、急須の魔人Tが早速気になる菓子パンにかじりついていました。
『美味しいかい。もうすぐ晩ご飯だけど。。。まぁ、いいか。』
ヤココはまた魔人Tの嬉しそうな姿に微笑むと、少し伸びをして、マロばぶの隣に腰かけました。
『あたしも少し寝ようかねぇ…』
そういって大きなあくびをひとつ。お気に入りのクッションを抱き寄せて、ソファに無造作に引っかかっていた触り心地の良さそうな毛布を引っ張ってマロばぶと自分に掛けました。
結局、そのままヤココとマロばぶは朝までぐっすりと寝てしまうのでした。
☆
~平八郎のその後~
ヤココが選んで、平八郎に「手数料」として渡した宝石と天然石、純金の塊に破格の高値がつきました。
孫の大学費用はもちろん、家賃やお小遣いを十分に渡してもかなり余るほどの金額でした。
おかげで、平八郎の生活もさらに潤いました。
かなりの金額に、最初は受け取ることを少し躊躇し葛藤した平八郎でしたが、
ヤココの気持ちと言葉を思い出し、心から喜んで、感謝して受け取ることを決め、思い切って楽しんで入ってきた大金を使うことにしました。
ずっと気になっていた、年季の入ったお店の様々な部分をリフォームしたり、奥さんと旅行を楽しんだり、奥さんにちょっといいものをプレゼントしたり、孫が欲しがっているゲームを買ってあげたり、車を買い替えたり、ずっと欲しかったものを気持ちよく買ったりしました。
平八郎も、平八郎の家族も、大喜び。
平八郎がお金を使った、リフォーム業者や、観光地のお店の人々、旅館で働く人々、ブランドショップの人たち、ゲーム屋さん、車屋さん、車の部品を作っている人、家具屋さん、洋服屋さん・・・様々な人にも、喜びが波紋のように豊かに広がっていきました。
たくさんお金を使いましたが、減るどころか、いろんなラッキーが重なって、むしろ増えていきました。
喫茶店のお客さんも増え、コーヒー粉や、茶葉を高く評価して、もっと多くお金を払いたいという人が現れたり、新しいアイディアを思いついて、実行してみたらそれがひょんなことから収入に繋がったり、宝石もどんどん売れて、新しい富豪のお客さんが増えたりもしました。
ほかにも、いろいろ、いろいろ。。。
ますます、豊かになった平八郎。もしかしたら、平八郎も、豊かさから逃れられない人、なのかもしれませんね。
一度豊かになったら、どんどん豊かになる。
まさに、そんな感じです。
☆
今回のおはなしは、ここまで。
これからの展開も、楽しみです。
それでは、また会う日まで。
それジャーニー👋🏻