ある早朝のこと、ゆさゆさと体を揺すられてタカラマミーヤココはゆっくりと目を覚ましました。
『ママ~~~、ママ~~~、わたし、また旅に行ってくる~~~』
『…ぅう~ん、オカメ、そうかい、そりゃいいね…』
ヤココはそう言いながら、体を起こして言いました。
『ゆ~っくり、時間を忘れて楽しんどいで』
優しくほほえみ、オカメちゃんの頭を撫でると、オカメちゃんはにっこり笑顔で頷いて、
ゆっくりと部屋を出ていきました。
『いってきま~~~す・・・』
オカメちゃんはこうして、どこかへ行きたくなったら、すぐに旅に出ます。
行先は決めず、心のまま、気の向くままに好きな方向へ、
ゆっくりと、自分のペースでただただ進み、旅の道中や旅先の “空気” “景色” 様々な “人・動物・もの・こと” との出会いを味わい、楽しむことが大好きなのです。
オカメちゃんは知っての通り、おっとり屋さんで、のんびり屋さん。
何をするにもゆっくりで、話すスピードもゆっくりです。
このとんでもなく魅力的な宝亀(タカラカメ)のオカメちゃんについて、もう少しお話しましょう。
オカメちゃんは、タカラマミーヤココが趣味の編み物をしている時に、
気付いたら可愛い亀の編みぐるみが出来ていて、あんまり可愛いので抱きしめて撫でていたら、
突然いのちが宿り、オカメちゃんが生まれたのです。
ですので、不思議ではありますが、オカメちゃんはヤココの最愛の娘なのです。
オカメちゃん、さすがはヤココの娘というだけあって、とてもおおらかで明るく、好奇心旺盛で楽しいことが大好き。
すごく前向きで、ものごとの良い側面にしか目が向かないので、いつも上機嫌。
すごく純粋で、愛らしさに溢れ、愛情深く、キラキラと輝くまん丸のつぶらな瞳と、その可愛すぎる存在感で、全人類を魅了してしまいます。
その“尊さ”ゆえに、オカメちゃんに出会った人は必ず、オカメちゃんへの愛が爆発して、なにか与えたくなってしまいます。
ですので、人々は目に感謝の涙を浮かべながら、お金や宝石、貴重品などを甲羅に置いて行ってしまうのです。
オカメちゃんは、家族と、ヤココの親友・和三盆平八郎の前以外では人の言葉を話しません。
出会った人と何も話さずとも、可愛さと魅力、溢れる愛や心地よい雰囲気だけで、
みんなを愛と幸せで満たしてしまう存在、それが宝亀(タカラカメ)のオカメちゃんなのです。
そんなオカメちゃんに出会えたら、最高ですよね。
ですが、誰でもオカメちゃんに出会えるというわけではありません。
オカメちゃんに出会える人は、とっても運がいい人なのです。
なぜなら、いい気分でいる人、自分にも人にも“やさしさ”を少しでも持っている人の前に、オカメちゃんは現れるからです。
そして、オカメちゃんに出会った人は、その後必ずとっても“いいこと”が起きます。
何かの力が働いて、オカメちゃんに与えたもの、与えたときに感じた素晴らしい“気持ち”が、雪だるまのように大きく成長して、その人に返っていくからです。
☆
オカメちゃんが旅に出た後、ヤココはまた眠ってしまいました。。。
その数時間後、大沸騰した急須の魔人Tが大騒ぎでヤココの部屋に怒鳴りこんで来ました。
『バボボーーーーーーーーッッッ!!!!!!』
『…う~ん、人が気持ちよく寝てるってのに、なんだい、朝っぱらから…』
ヤココは寝ぼけながら言いました。
『バボボ!ボボボボバーーボボバボボ!!ボンボボ~~~!!!!!』
なにやら、激怒している急須の魔人Tに、ヤココが穏やかに話します。
『いいじゃないか、あの子はひとり旅が好きなんだよ。心配ないよ、いつも元気に楽しそうに帰ってきているだろう』
『ンバボーーー…!!!』
どうやら、オカメちゃんがひとりで旅に出たことを怒っているようです。
何を隠そう、急須の魔人Tはオカメちゃんのことが大好き。実は誰より溺愛しています。笑
毎回オカメちゃんがひとりで旅に出るとこうして激怒して心配します。
なにかあったらどうするんだ、どうして勝手に旅に出すんだ、引き止めろ~!とでも、言っていたのかもしれません。
しかし、ヤココはオカメちゃんの不思議な力と魅力を知っていますし、心配などしたことがありません。
いつだって、いい方しか信じないのがタカラマミーヤココなのです。
『そんな小さな体で沸騰すると、蒸発してあっという間に消えちまうよ』
そう言ってヤココはケラケラと笑っています。
それにまた沸騰しそうになっていると、急須の魔人Tのことが大好きなマロばぶがやってきて、
『ナァァァァ~~~ン!』
と大きな声で鳴いた後、魔人Tをパクっとくわえてどこかへ行ってしまいました。
魔人Tに遊んでほしかったのか、一緒にお散歩したかったのかは分かりませんが…。笑
それを見てヤココはまたひとしきり笑うと、ふぅ、と一息ついて、
『・・・さてと、コーヒーでもいただこうかねぇ』
と言って、ゆっくりとベットから降りたのでした。。。
☆☆☆つづく☆☆☆