泣いてもいいんだよ | 恋愛小説家

泣いてもいいんだよ

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思い出の曲が頭を巡っているのかもしれないし
好きな映画の名シーンを反芻したり本のページを捲っているのかもしれない。
何の変哲もない風景を見ている横顔が少し潤んでいるようだった。

狭いシートで触れる肩から伝わる温度と重さが好きだ。
カーブで傾いた身体が静かに上下しているから
あなたの横で、じっと、雛を護る親鳥の気持ちになる。
「起こしてあげるから寝てていいよ」と囁く。

瞼の裏に誰かの去り際や目映い笑顔や柔らかな匂いの記憶などが
何の変哲もない私の隣で過ることがあるとしても
それは至極自然なことなのだと思う。

互いを思い遣って生きられるように
心はときどき寂しくなる風に出来ている。
泣きたいときは泣いてもいいんだよ。
きっと、かみさまが「ひと」を創ったときに
そうやって私たちに優しさを植えたのだと思うから。