7センチ | 恋愛小説家

7センチ

真新しいブーツが、帰りはきつい。

秋になるなり買ったくせして、しばらく玄関に鎮座していたのは
その素材や形やヒールの高さが
どこか自分の雰囲気じゃないと気後れしていたから。
服や靴にこちらが着られるようではダメだと逡巡し、
結局ペタンコの靴を履いてしまう朝を繰り返していた訳で。

ところが、ある日あなたがやってきて
「格好いいじゃん」と、並んだブーツを見て言った一言で
よし、履き熟してやろう!なんてスイッチが入った。

ホントにそう思う?

私にとって、あなたからの褒め言葉は
有名な評論家のアドバイスよりもありがたいし、
最先端のファッション誌よりも影響力がある。
たった一人に気に入られたい願望は、至極単純。
恋なんて、そんな勝手なことばかり。

そんなこんなで、ついに日の目を見たブーツ。

冬が終わろうとしていても、夕方に脚がむくんでいても
今日は7センチ高い世界を歩いているし、
心なしか背筋まで伸びている。