腕時計 | 恋愛小説家

腕時計

忘れものの腕時計を、なんとなくはめてみる。

一番小さい穴から数えて2番目ぐらいにする。

私の腕にはぶかぶかで、手首がやけに華奢に見えた。

つくづく、私は「女」だと思った。

あなたのことが恋しくなった。


買い物するときに、気づいた。

財布の中に入っているのは、預かりっぱなしのポイントカード。

裏に書かれた無造作すぎるサインを眺めた。

嬉しくて、何度も何度も眺めた。

あなたの文字にまで恋をしている。


気付けばあちこちに痕跡があるからたまらない。

そしてたぶん、ふにゃふにゃと力なく笑っている。