素描
キッチンにいつも、みかん軍団。
テーブルの上にみかんを置いておいたら、
とても器用に皮をむいて食べていた。
全部つながったまま、ヒトデみたいになった皮に
小さな線がすっと入る。
旧い映画を観て二人して泣いて、
繋がった手のひらがしっとりしていた。
赤くなった目でうつむいたまま照れ笑いする横顔に
太い線がまた、入る。
「遊ぶこと」に真剣になって、
童心にかえる大きな子どもに、
目じりの皺もいとおしく、細い線を一本増やす。
新発見と再認識を繰り返して、
私の中であなたという人物が描かれていくから
デッサンはいつも未完成のまま。
どの線も、あなたをつくる素描の一部分だから
一度引いた線は消したりしない。
何枚だって描くから、そのままでいてよ。
それでいいし、それがいいと思うんだ。
