3両目の蜂
発車時刻になっても動かない地下鉄で、流れたアナウンス。
「当列車の3両目の2番目のドアの蛍光灯付近にスズメバチがおります。」
私は1両目に乗っていました。
3両目に乗っていた人を、2両目と4両目に避難させ、
珍客、スズメバチを一匹乗せて
一見空っぽの3両目と連結した地下鉄は発車しました。
道中すべての駅と、車内で繰り返し聞いたアナウンス。
あの後スズメバチはどうなったんだろう。
そもそも本当にスズメバチだったの?
喉がひりひり。痰からほのかに血の味がしました。
はちみつレモンのドロップを口に放り込んで、ごほん。
マスクのくすぐったさにも慣れました。
★
あるとき、自分について
身長体重、見た目も出来ることも
総じて平凡な気がしたのです。
それでも、そんな私でも
誰かにとって「特別」であるということがわかっただけで
スキップするほどうれしかった。
生きている、愛されている、愛している。
私の持っている、一番の財産は
見えないところにあるのだと思いました。