残念なわたし | 恋愛小説家

残念なわたし

「人の気質は、顔を見ればほとんどわかります。」

集中する視線を意に介することもなく、

講堂の中をぐるっと見やり、教授は毒っぽく言い放った。

「まぁざっと見て、この中の2人は確実にヒステリーなタイプだね。」


出席と成績に寛容な、心理学。

その日はわたしが「代返」の当番だった。

段々畑のような一番大きな講堂で半信半疑で聞いていた話。


「占いも学問も、言ってみれば統計学だよ。

パターン化して分析すれば、大概は当てはまる、

事実、集団があればその中には必ず、一定数「病気」の人がいるもんだ。」


具体的に説明のつかない、今の「気分」も

病気だったらいいのにと思った。


週末に、彼の本棚の隅に見つけたアルバム。

「開いちゃだめだよ」という警笛を無視したのは自分なのに

思いきり打ちのめされてしまった。

何年か前にとても好きだった人がいたって話は聞いていた。

本当に、本当に、「大好き」だったんだね。


受身だった彼を、いつもわたしが追いかけていた。

まんざらでもなさそうに付き合ってくれていたし

愛情表現が苦手だとか、不器用なところがある人なんだと思っていた。

だけど違っていたみたい。


演奏会で花束を抱えて微笑む、美しいひとの横で

遠慮がちに、少し離れて立っている、めがねが違う彼。

いい顔して笑うんだ。

彼が自分から進んで恋していた事実が、焼きついた写真。


なんだかもう、わからなくて

何も食べたくない、何もしたくない、何も考えたくないけど

逆立ちしたって敵いそうもない劣等感と敗北感で

悲しいような、悔しいような、涙も出ない、残念なわたし。

打たれ強いと思っていたけれど、傷ついているのかもしれない。

けっこう、深いところまで。