そろそろ長い沈黙が来そうだ
きみを最後に抱いたのはいつだったろう?
そう、たしか春だった。
夏にはどこかよそよそしく
「ありがと、またね。」そんな風に
夜も早いうちに適当な駅で別れたんだっけ。
それでも僕に好意があって会いに来たんだろう。
純粋に自分を慕ってくれていたころのような
丁寧でひたむきな情熱がまるで感じられなくても。
目的もなく運転するのにも疲れて
わざとらしく伸びをする僕のとなりで
ほんの少しもこちらを向いたり、シートを倒すことはなかった。
見上げた横顔は
外の世界との視界をさえぎる雷雨をにらんで
早く止んでちょうだいと、祈っているようだった。
(そろそろ長い沈黙が来そうだ)
予感していた通り、きみは消えて
追いかけもしない僕がいる。
慌てても仕方ないし、なす術もない。
僕には僕の現実があり、
それはきみも同じことだから。
縛りを与えず、互いを自由にしておくことに
はじめこそ難色を示していたきみは
まだ将来を夢見ていたんだろうか。
こうやって何度も近づいたり離れたり
長ければ何ヵ月か音沙汰ないこともあった。
それでもひょっとしたら今度ばかりは
きみが完全に消えてしまうような気がしている。
眼鏡を外してこめかみを押すと
頭だか、胸だかわからない場所が鈍く痛んだ。