近況報告 | 恋愛小説家

近況報告

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自由が丘から奥沢方面へ

 

中途半端に余った時間をつぶすために散歩した
すぐ帰るほど短くもなく

もう一軒行くほど長くもない

一駅歩くぐらいには丁度いい

 

僕は仕事帰りのスーツ姿

君は仕事帰りのワンピース姿

かつて僕らは

揃いの制服を着て歩いていたっけ

 

今日は近況報告をしたかった

「婚約したんだ」って言わなくちゃと思っていた

 

児童公園の白っぽい街灯に

小さな羽虫が寄り集まって飛んでいる

 

君はいつもブランコをやたら高くこぐから

錆びたチェーンがキィキィと軋む音を立てる

そのリズムで口を開くタイミングを計っていたら

「結婚、するんだ」と

揺れる君の声に先を越されてしまった
 

勢いよく飛び降りた君は

なんだか肩の荷が下りたような顔をしていた

「泣いちゃったらどうしようかと思ってた」

 

いつまでも君のことばかり引きずってないよ

だけど

ずいぶん長いこと一緒に居すぎたね

  

そして僕らはキスをした

さようなら、さようなら

 

誰もいない公園で

空っぽのブランコが揺れていた