タルト・オ・ショコラ・フランボワーズ
意外なほど、かわいらしい店に連れて行かれた。
タルトが美味しいというそのカフェは、壁も床も、揃いのファニチャーも真っ白で、やたらまぶしい。天井まである大きなガラス窓から、タイル張りの歩道に、何事かに満たされた顔で通りを行く人々が見えた。誰もこちらを見ているわけじゃないのに、つい、ここに座る自分の姿が浮いているような気がして、うつむいてしまう。
長いこと、悩んだ末に
(カタログのようなタルトのメニューを、私はもう3周も見た。)
「決めた。私はね、コレ。あ・・・、やっぱり、こっち。」
結局最初に気になっていた、チョコレートと苺のタルトを選んだ。
「おなじだ。」
予想が外れて、彼も私と同じタルトを選んでいた。二人で同じというのが、ちょっと気恥ずかしく
「ごめん、やっぱりコレにするわ。」
私は第二希望のベリータルトに、変更した。
タルトがやってくるまでの間、他愛もない会話をしていた。そこで私は、彼がとても忙しくしており、疲れると甘いものが食べたくなるという事を知った。理由がわかると少し気の毒になってしまう。
間もなく店員がやってきて、切りたてのタルト乗せた小皿を差し出しながら訊いた。
「タルト・オ・ショコラ・フランボワーズのお客様は・・・?」
「あ、こちらです。」いいかけて止まる。
彼の手が、黙って私を示していたから、思わず「いいのに!」と、制してしまう。
テーブルにならんだ皿を交換しようとする私になどお構いなしで、目の前におかれたベリーのタルトは、優雅な動きであっという間に口へと運ばれていった。
いつもそう。
そんな風に、この人は不意にやさしさを見せる。