「桜宮サーガ」,ブラックペアン世良くん三部作の最終刊です。
待ちに待ったスリジエ(さくら)の物語。
桜の街にさくらの樹を植えようとした人の物語。
いよいよです。
ネタバレ気にせず書きますので,ご注意くださいね。
シリーズの特性上,桜宮サーガの他の作品に触れてしまうかもしれません
スリジエシリーズは,過去の話だから,桜の樹がどうなったかなんて,誰が壊してしまったかなんて,ファンはみんな知ってたの。
世良先生の未来もね。
「そのさくらの樹は,花開くことはなかった。さくらの名前を冠する街なのに,皮肉なものだ。あれほど,さくらという言葉が似合わない街を,僕は他に知らない」(世良「極北ラプソディ」)
「昔,あの岬に桜の樹を植えようとした人がいた。私はそれを引っこ抜いた」(ゴン「ケルベロスの肖像」)
そんな制約の中で物語をつなぐのは大変だとおもうけれど,
満足感たっぷりの物語でした。
もう。
世良に感情移入して読んでいたためか,ラストのせつなさがはんぱない。
天城先生が似合わない魑魅魍魎うごめく日本の医療現場で,彼が一番興味のない院内政治の世界で,もがき苦しむ様は,見ていてつらい。
高階先生の考え方,生き方を見ていたファンであっても,この作品ばかりは,反高階派になってしまうのでは?と思わせるほどの「帝華大の阿修羅」の悪役ぶりったら!!
ちなみにこの作品。
みょーーにおやじたちがカコイイ。
真行寺教授,三羽がらすのひとり。鏡先生。ゴンにきつい一言をいってくれたとき,それが高階先生にとっての救いにも読者にとっての救いにもなったよね。
ゴンのお友達ぶりが,笑えた坂田課長。まだまだ課長なので,みずから現場に動く坂田局長,ステキ。
近い将来,部下に苦労するね( ´艸`)
黒崎教授は,てってーした凡人ぶりが相変わらず憎めないし。
もちろん当時の若者の物語でもあります。
・ジェネラルルージュの伝説を作った速水。この陰で速水と花房の出会いは進行していたの?
かは,世良くん視点なのでわからないが。
伝説の裏で,天城先生が苦闘していたなんて!!胸がいたむわ。
でもね,速水にはねこさんがぴったりだと思うの。
・医学生で厚生省を希望している彦根。天城先生の言葉が彼をどうかえたのかしらん。
・ぐっちーも1行だけ登場してるし「頼りなさそうな研修医の周りで軽傷者が口々に不安を訴えていた。」。
ゴン&真琴の策略ペアの事始めもここからでしたね。
実はふたりはとってもお似合いなのかも
佐伯教授VS高階先生のシーンも印象的でした。
世代交代もかくあるべしのようで。
でも心情的に天城派として読んでいたので,佐伯先生押しでしたが。
そして。
そして。天城先生の未来。
世良くんの手紙。
ラストシーンで男から男に手紙を出すシーンは,先日読んだ「秘密」にもあったなぁと思ったけれど。
こちら「スリジエ」の方が万感胸に迫った。
「一緒に仕事がしたい」
この気持ちがかっこいい。胸にせまる。(だから青木に感情移入できないんだとあらためて自己分析)。
世良の思いが痛いほどわかるし,それに応えようとした天城の気持ちを思うとラストは世良のように呆然と立ちすくんでしまう。
ラスト2行が必要かは,微妙だなぁ。
ファンなら世良の生き方の未来を知っているわけだし。
というわけで。
一気に読了したあと,「ラプソディ」,「ケルベロス」を読みかえして,世良と桜の樹の物語を改めて堪能しました。これから「ブレイズメス」にもどるつもり
うまくまとめた三部作だったと思います。
スリジエの精神がオレンジになり,そしてAiセンターであること。そして。
Aiセンターがマリツィアの,天城先生が遺した作品であること。
崩壊してしまう未来。
世良先生の救済とこれから。
「当時はそれが正義だと信じていました。でも,長い時を経て今,自分の間違いに気がついたのです」というゴンの後悔。
東城大学医学部の未来はどこに向かう?
今後もやはり「桜宮サーガ」が気になるぞーーー!!
「ケルベロスの肖像」の感想はこちら
。
「極北ラプソディ」の感想はこちら 。
「ナニワモンスター」の感想はこちら 。
モナコの,モンテカルロの海の碧さを知りたくて,ネットの世界で画像を探しまわりました。
なんて青い蒼い澄み切った海なのでしょう。
ドクトル天城のいる世界。
そこから連れ出した世良の罪深いこと。
いつか行ってみたいなぁと思いました。
カジノもF1も興味がないんだけどね。