仕事を休んで1日目



朝早く、妻の父が手伝いにきた。


子どもたちの支度をして、保育園に行き、病院へ



お父さんを連れてきたと看護師に伝えたら、愛ちゃんの負担にならない?なんて、心配された。


お父さんに確認すると、


俺のことは気にしなくていい。

ただ愛ちゃんの手を握っていたい。


と言っていたので、看護師さんに説明して入れてもらった。



病室に入ると、妻はベッドに座っていた。


よくも悪くも昨日と変わらない様子だった。



お父さんは、まず妻の手を握った。


じっと顔を見るお父さん


後で聞いたら、


驚いて声が出なかった。

愛ちゃんの頬があんなにこけて。

俺後で一人で泣いてたよ。



と言っていた。



お父さんは約束どおり、妻の手を握り、頭を撫でて、お腹をさすった。


私は、妻と話していた。


途中、緩和ケア病棟の説明が入る。


現在満床なので、空きが出れは今週中に入れるとのことだった。


空きという言葉に敏感になる。


子どもたちも1日1時間は面会ができるそうだ。


さらに、外出、外泊も多少しやすくなるらしい。





午後も同じように過ごした。


夕方、子どもたちを迎えに行き、帰宅する。


風呂に入れてご飯を作って食べて、私だけ再び病院へ



妻は、夕食中だった。


一口食べて、吐き戻してしまっていた。


着いてすぐに背中をさする。


どうにか、どうにかしたいのに、私には、背中をさすることしかできない。



落ち着いた頃、看護師さんに取り換えなどをお願いした。


在宅看護になれば、こういう準備も必要だと感じた。



おちついた後、今日は音楽を聞こうと言った。


何が聞きたいと聞くと、


中島みゆきちゃん


と答えた。



ちゃん付けするのが面白かった。


銀の龍の背に乗って

時代


妻は、机に突っ伏したまま静かに聞いていた。

私は、妻の頭をなでながら聞いていた。



私の好きな曲も聞いた。


私がラブソングを歌ったりもした。



妻は、素敵と言って、頭をなでてくれた。


明日もお父さんと来て大丈夫か聞いたら、大丈夫とのことだった。

少し疲れたが、今日はよく眠れそうと言っていた。



妻に寄り添い、マッサージしたり、音楽を聞いて過ごした。


最後に、妻に子どもたちへの声のメッセージをお願いした。


これからの子どもたちに、妻の声を残したかった。

希望は捨てないが、最期が近づいてるのはわかっている。

もし奇跡が起きれば、それはそれでいい思い出だ。


妻に、カメラをむけようとすると、嫌がった。


私は、机の上にある家族写真にカメラを向けて、録画を押した。


長女の分と長男の分


それぞれ一分ずつ、妻は子どもたちへの愛を残した。


私の分もほしいと思ったが、妻が吐き戻しそうになったので、妻の背中をさすり、落ち着かせる。


この吐き気がなければ、ご飯が食べられれば、どんなに良いのだろう。



落ち着いたので、私は帰ることにした。


妻にまた来るねと伝えて帰宅した。




家に帰ると、長男が泣いていた。


お父さんと長女によれば、食後寝てしまったので、お父さんが布団に移そうとしたら機嫌が悪くなったらしい。


あの手この手であやそうとしたら、今度は私がいないのでギャン泣きしながら家中グルグルまわっていたそうだ。

そのうち長女まで泣き出して、大変だったらしい。



2人を抱きかかえる。


すぐに泣き止む子どもたち


さみしい思いをさせて、ごめんね。


2人と遊び、歯を磨き、就寝





明日こそは、奇跡が、起きないかなぁ