今日の昼頃、妻のお母さんが病院に行った。


先週から、妻のお母さんは、


愛ちゃんのことが諦められないから、先生に治す方法がないか聞いてみたいと言っていた。


そして、先生と日程調整して、今日の昼頃にその場を設けてもらった。



昼過ぎになって、お母さんから、終わりましたと連絡が入る。


電話をして、結果を尋ねた。



お母さんは、何度もため息をつき、うんとね、うんとね、と、口に出したくないことをまとめようとしていた。



結論は、いい治療はなかった。

先生には、今の妻の体力では、そもそも治療に耐えられないと言われたそうだ。

腹腔内化学療法についても尋ねたが、今となってはどうにもならない。


お母さんは、しきりに、病気がわかった時に腹腔内化学療法をやるべきだったと言っていた。


腹腔内化学療法は、私の住んでいる県では受けられなかった。

東京に移り住むしかなかった。

妻は、これを断った。

子どもたちと離れることが嫌だったから。

だから、今の病院でいままでの暮らしを守りながら生活をすると決めた。


だいたい、妻は診断されてすぐにお腹が痛いと言って、何度も入院していた。

他の病院に診てもらう余裕はできなかった。

せめて少しでも体調が落ち着いたら、セカンドオピニオンを受けるという考えも浮かんだが。。


だから、あの時の判断は、間違っていないと思った。



ただ、お母さんの話を聞いて、なんとなく心にしこりが残った。


お母さんは、先生から今後の治療方針を聞いた。


選択肢は3つ


1つ目は、訪問診療を受けられる病院を探して、自宅に帰る。

2つ目は、同じ病院にある緩和ケアの病棟に移る。 

3つ目は、抗がん剤治療を無理やり続ける。


ということだった。

次の土曜に私と妻と先生で話し合いたいとのことだった。


特に、前回私が先生から聞いた話と変わりはなかった。


変わりがないのに、お母さんから聞いた選択肢は、落胆が混ざってずっしり重かった。

私は現実に戻された気がして、お母さんと一緒に絶望した。


さらにお母さんは、妻と面会したと言っていた。


今日、お母さんたちは妻のおばあちゃん、お父さんを連れて来ていた。


病院に日程調整した際、特別に面会できることになったそうだ。


何故私はだめなのだろう…



3人で45分くらい、妻と話したそうだった。


どんな話をしたかは、あまり聞かなかった。

ただ、妻はどんな様子だったか尋ねると、ずっとベッドで横になって、元気がなかったと言っていた。


なんとなく、元気になかった理由はわかる気がした。


電話を切った後も、私の中にはお母さんから移った不安がずっと残っていた。



仕事の帰り、私は、すぐに妻に電話をした。


お母さんから移った不安を取り除きたかった。


体調を尋ねると、今日は腹水を4キロ抜いたので、スッキリして調子が良いと言っていた。


声は明るく、口調もしっかりしていた。


お母さんたちから聞いた、治療方針に就いて聞くと、土曜に退院の相談をするので来てほしいとのことだった。


妻の希望を聞くと、


自宅に帰りたい。


と言った。



私も、妻に帰ってきてほしかった。


だから、それでいいと思った。



夜、ご飯を終えた後は、お母さんと電話した。


お母さんは、何かいい方法はないかなとばかり言っていた。

不安でいっぱいの電話だった。



お母さんの話を聞いてなだめた後、妻にはその不安を見せないようにお願いした。


不安は移るから、妻の気持ちが下がってしまう。 

少なくとも私はめちゃくちゃ下がった。




その後妻と電話をした。


妻は、子どもたちの遊ぶ姿を見て、たくさん声をかけていた。




子どもたちを寝かしつけたが、私は目が冴えていた。


まだ、お母さんから移った不安が消えない。



少し前に受けたカウンセリングを思い出す。


妻を愛する。

自分と妻を信じる。

勇気を持つ。


なぜか、しっくりきた言葉


カウンセリングを受けてから、私は、妻が今日1日を元気で過ごすことに感謝するようになった。


そして、今日元気だったから、明日も元気だろうと安心して眠るようになった。


当然、遠い未来はわからない。

でも、1日1日を大切に、妻を愛して生きることが、私のやることだと思った。


諦めたわけでもない。

ただ、遠い未来を想像して、不安にかられることを辞めただけ


目をそらしているだけかもしれない。


でも、不安になるのも妻の笑顔を見て元気になるのも、同じ理由で、それは妻を愛しているからだ。


だから、妻を愛することに集中しただけだった。



もし退院したら、介護休暇制度を使って休もうと考えている。


当然少し給料は下がるが、妻に寄り添いたいと思った。

最大で半年は休める。


その休みで、一生分の愛を妻に伝えたい。


その間に、妻の体調が良くなれば、仕事に復帰すればいい。


ここで休まなかったら、一生後悔する。


自分に言い聞かせる。


愛ちゃんを愛している。

愛ちゃんと自分を信じる。

勇気を持つ。



…私の中で足りないのは、愛ちゃんを信じる気持ち


治ると信じる気持ちだ。


カウンセリングを受けた時に、治りますかと尋ねることは、治ると信じていないからだと言われた。



信じる。信じる。