妻が帰ってきて2日目


妻と久しぶりに同じ部屋で寝る。

子どもたちも一緒


妻は点滴をしたまま寝ている妻


一度だけ早朝にアラームが鳴るが、点滴がほぼ空になった合図だった。

初めて自宅できちんと栄養点滴をこなせた。

それがとても嬉しかった。


ただこれからは妻の看病も生活に含まれていくのを実感した。

頑張れる。

妻が元気になってくれるなら。いくらでも頑張れる。


朝起きてからも、妻には家事をさせずに過した。


今日は節分だから、まずは豆まき

子どもたちが作ったお面を付けて豆をまいてもらう。

妻にもお面を付けて、鬼を払った。

私は執拗に妻の腹に豆を投げて、鬼は外と唱えた。


その後買い物に行って、昼は


チャーハンやポタージュ、茶碗蒸し、肉まんを少しずつたべた。



午後は、まずみんなで昼寝をした。

長女は久しぶりに妻と添い寝をした。

夜は点滴があるから、なかなか添い寝できない。

妻と長女が寄り添って寝ているだけで、嬉しかった。



その後は近所の美容室に行って、子どもたちは髪を切った。


家族4人でお店に行き、長女は前髪だけ切った。

長男は、まだ慣れていないので、私に抱っこされたまま前も後ろもしっかり切った。


2月17日に発表会があって、その前に髪をさっぱりさせたかった。



長女の髪を切っている間、美容師さんが地震どうだったと尋ねてくる。


1月1日の地震

その日は、まだガン宣告を受けたばかりで、妻は具合が悪くてがんセンターに入院、私は子どもたちを連れて、実家に帰っていた。


あのときは、何もかもが限界で、家族みんなで実家に引きこもろうとしていた。

それが、妻が


2月にある発表会が見たい。


と言ったことで、踏ん張って今も4人で暮らしている。

1月は、そのほとんどが入院だった。


私は、仕事をしながら、子どもたちの面倒を見て、妻の面会に行き、家事をした。

大変だったけど、こなせた。自信になった。

付いてきてくれた子どもたちは本当に成長した。

妻のためなら頑張れる、自分が誇らしかった。


そして、今2月

もうすぐ、発表会


そう思うと、家族4人で美容室に来て、長女が髪を切ってもらってることが、奇跡のように感じた。

嬉しくて、涙がこぼれた。



子どもたちの髪を切り終わったあと、4人で車移動して、今度は妻の美容室へ

妻を美容室におろすと、私たちは近くの公園へ


今日は晴れていたが風は冷たく、公園にはほとんど子どもがいなかった。


長男は最初寝ていて抱っこされていたが、公園に着くとよたよた歩き、長女と遊び始めた。


最近、外でも歩くようになった長男

まだフラフラしているが、よく歩く。

長女や私を追って、一生懸命だった。


長女と長男はカメラ型のしゃぼん器を使って遊んだり、ボールで遊んだりした。

その様子は、写真や動画を撮った。


あとで妻にみせてあげよう。


帰りがけには、大きな犬と遭遇した。


黒くて私とほぼ同じ大きさの、狼のような犬


長男は犬が好きで、迷わずまっすぐ犬に近づいて、立ち止まる。


私は、あまりにも犬が大きいので、きっと怖がって触りに行かないだろうと思った。

飼い主のお兄さんも同じだった。


お兄さんが、触ってみる?と尋ねると、


長男は迷う様子もなく、さらに犬に近づき、犬の鼻を躊躇せず撫でた。

私もお兄さんもビックリした。


犬は嬉しそうに長男の手を舐める。


長男は、なめられるのは嫌で手を引っ込めるが、すぐに手を伸ばす。


犬は嬉しくてまた舐めようとする。


長男が

やーやー

とか言って、手を引っ込めて私に抱きつく。


どうにかして、舐められずに触りたいらしい笑



長女は、私も触りたいと言いながら、犬が怖くて近づけず、私の影で見ていた。

可愛かった。


私は、膝を着いて犬をなでた。

犬は私に飛びかかって、顔を舐める。

可愛い犬だった。


長男と長女は、その隙に犬を撫で撫でした。

二人とも満面の笑みだった。



公園で遊んだあとは、髪を切った妻と合流して、家に帰った。


風呂に入って、妻の栄養点滴を付けた。

初めて夫婦二人で準備して、点滴を刺したりして、始めることが出来た。


これがあれば、妻は食事を取らなくても生きていける。

少し淋しいが、仕方ない。




夕食


今日は恵方巻と餃子と味噌汁にした。


どれも出来ものだったが、子どもたちは喜んで食べた。


私は、恵方を向いて、妻の治癒を祈願しながら、恵方巻を食べた。


一切他の方向は見なかった。

口の中にある米粒一つ無くなるまで、ずっと恵方を見続けた。


すると、妻は少しなら食べても良いかなと言って、恵方巻を短く切って、食べようとした。


ビックリした。

米は普段五分粥で、それでも食べれなかったのに。

腸閉塞で固形物を食べると、痛くて苦しくなるのに。

まず妻がそこまで食欲がなかったのに。


私は、とっさに恵方を向くように言う。

妻は私に背を向けて、恵方を向き、黙って食べる。


でも美味しかったのか、何度も振り返って私に微笑む。


その度に、私は


恵方を向いて!


と言って、妻に恵方を向かせる。


結局短くしたものの、恵方巻を一切れ食べきった。

妻は美味しいと笑った。


私は、何故かその姿を見て涙を流した。

妻が、なんで泣くのー?と言う。


私は、

だって、ママがちゃんと食べてくれたんだもん

と言いながら、そのまま声を上げて泣いた。


ずっとずっと泣いた。涙が止まらなかった。

あまりに泣くので、長女が私の隣に来て、よしよししてくれた。

妻も寄り添って、私を撫でた。

私は、2人を抱きしめながら泣いた。


妻は、心配させてごめんねと言う。

私は、嬉しかったと伝える。

もう、まともにご飯は食べられないと思っていたから。

ずっとずっと点滴だけと覚悟していたから。

本当に嬉しかった。


しばらく泣くと、今度は長男が一緒に泣き始めたので、私は泣くのをやめて、みんなと笑ってご飯を食べた。


今日の妻は、

朝 コーンスープ、茶碗蒸し

昼 ポタージュ、チャーハン少し、肉まん半分

夜 コーンスープ、茶碗蒸し、恵方巻一切れ、餃子1個

食べた。

少しずつだけど、食べる量が増えていた。

もう食べられないと言われた固形物も食べた。

すごいと思った。

何より点滴に頼らず、ちゃんと食べてくれるのが嬉しかった。



食後は、家事をした後子どもたちと少し遊び、午後8時半に就寝した。


子どもたちと妻は疲れてすぐに寝た。

私もすぐに寝た。




今は夜中


妻の様子が心配で起きてしまった。


あんなにたくさん食べたから。


ブログを書きながら、妻が少し目覚めたタイミングで体調を聞く。


お腹の痛みや張りはなかった。

ホッとした。

痛みが出ないなら、きちんと食べられたと言える。

本当に良かった。



明日は、私の母が来る。

一週間、泊まって手伝ってもらう。

母は家事に強く介護士なので安心だ。


今週は、とにかく退院した妻の調子を整えることに注力する。




でも今日は、本当に良い日だった。