今日は、妻の退院の日だ。


妻が帰ってくるのに、不安になる。


朝早く起きて、インターネットで腹水や腹膜播種について調べる。


何を見ても、絶望ばかりだった。



子どもたちと一緒にご飯を食べて、職場に行く。

仕事に熱中する。


ふとスマホを見ると、妻からの連絡に気づく。


妻が帰ることに不安を感じているのがわかった。

また、気力も少し減っていると感じた。

いつもより落ち着いてて、悟っているような気がした。


その悟っているような文面は、死ぬ準備をしているのかと思わせた。

頑張るって書いていても、悲しくなった。



妻に、絶対に諦めないからと伝えて、仕事に戻る。



夕方、仕事を終えて妻を迎えに行く。

元気そうだった。


今日の分の点滴はもう既に繋いでいた。

このまま明日の朝まで続ける。


看護師さんに何か質問はあるかと聞かれ、色んなことを聞いたが、今思い返すとあまり覚えていない。


ただただ、不安だったのだろう。



妻を車に乗せて、家にむかう。

妻は、このまま子どもたちを迎えにいこうと言うので、途中で進路を変えて保育園へ


長女を二人で迎えると、満面の笑みで


ママ!


と言って駆け寄ってくれた。


妻が告知された日も、こんな感じで2人で迎えに行ったのを思い出す。


今日は、泣かないで済んだ。

妻と子どもたち2人、家族4人で歩く。

こんなことが、本当に幸せだ。



みんなで帰宅して、風呂に入り、ご飯を食べる。

妻には家事をさせず、ずっと子どもたちの話し相手になってもらった。

2人は交互にピーチクパーチク話していた。

ママが帰ってきて、本当に嬉しかったのだろう。

二人ともいつもの4倍はしゃべった。

十倍わらった。


一通りの家事をこなして、テレビを皆で見た。

妻は、エアロバイクに乗って5分か10分くらい運動をしながらテレビを見ていた。

運動を積極的にする妻が頼もしかった。



子どもたちを寝かしつけ始めると、妻の点滴のアラームが鳴った。


妻の中心静脈栄養法は、カフティーポンプという機械で量を調整している。

この機械のアラームだった。


説明書を見て色々試すが、アラームは鳴り続け、点滴は停まったままだった。


この機械のサポートセンターに電話をして、症状を説明したが、


それはどうにもならないので、訪問看護を呼んで下さい


等と言うだけだった。

何故こうなったか、このような症状はどういった時に起こるのか、何を聞いてものらりくらりとして、結局看護師に見てもらえと言っていた。

すごく冷たかった。


人の命を預かる機械のサポートセンターはこんな感じなんだな。

と、一つ勉強になった。


電話を切り、妻に説明して訪問看護を呼ぼうとすると、


もう、今日はやめよう。

この点滴は栄養だし、半分は入ったから。


と妻が言った。

以前点滴が上手くできずに訪問看護に来てもらったことを思い出す。

訪問看護に来てもらって対応してもらっても上手くいくとは限らなかった。

むしろ疲れてしまう可能性のほうが高かった。

妻はそれが嫌だった。



私は、妻にもう少し色々やらせてほしいと言い、説明書やインターネットで対応方法を調べて試してみた。

すると機械を正常に作動し、妻への点滴が再会された。


妻は、ありがとうと言ってくれた。


私の役割は、妻の諦めたいことを諦めないことだと思った。

妻が諦めても、私が諦めずにチャレンジし続けて、成功すればそれでいい。


一人なら辛いけど、二人なら

夫婦で良かったと心から思った。



今日から、家族四人暮らし

不安もあるけど、妻がいてくれるだけで、頑張れる。勇気がわく。

一緒に頑張ろうね