今日の早朝


妻が鬱かもしれないとコメントをいただいた。


鬱と考えたことがなかった。

妻はいつも健康的で、鬱とは無縁の人だった。


でも、ガンと戦って疲れてしまい、鬱になっているのかもしれない。


そうかんがえると、妻の言動や態度を許せた。

いっぱい戦っているのだ。

疲れて鬱になってもおかしくない。


むしろ、妻の心のケアをしたいと思った。

妻の心を少しでも穏やかにしてあげたい。

そう思えた。


午前5時

妻を起こして、お灸をしてあげる。

その間、妻を優しく撫でる。

妻の話を聞く。


痛いと、他のことが何も出来ない。

それが本当につらい。


そう言っていた。

妻は、十分頑張って、そして苦しんでいた。


妻と話して、今日は病院に行くことになった。

いつもは消化器外科だが、今回は緩和ケアの診察を受けたいと妻が言う。


昨日の夜、辛い状況を打破するために色々調べていたそうだ。


偉い妻だ。

妻に賛同する。


仕事に行く。

妻から緩和ケアに行った結果の連絡が来た。


年末のCT検査を確認したところ、ガン細胞のせいで、腸が狭くなっている。

腸を通る際に強い痛みが出る。

今は、安静にして、栄養をとることが大切だから、今日から抗がん剤治療を受ける16日まで、毎日栄養剤の点滴を受ける。


そう書いてあった。

また、先生は、私と直接話したいと言っていたそうだ。


私は、お昼すぎに電話をかけた。


先生が出て、妻の容体を聞いた。

ほぼ妻から聞いた内容だった。


先生に、いくつか疑問を聞く。


妻は、ガンによる腸閉塞ですか。


そうです。

腹膜にできた1ミリくらいのガン細胞が腸に癒着して、腸の通りを悪くしています。

1か所ではなく、何か所かあります。

治すには、抗がん剤治療でガン細胞をなくすしかありません。


癌性腸閉塞


怖い単語だった。

本当に目の前が一瞬暗くなった。


治るのか。

それは、不味いのか。

もう妻は、まともにご飯を食べれないのか。

インターネットには、末期がんの症状とあった。


いろんな気持ちが湧き上がる。


先生が続ける。


まだなりかけです。

にちんと治療を受ければ、回復する見込みはあります。


その言葉で、ギリギリ立ち直る。


さらに先生は、

若い人ほど我慢して、病院に来た時には手遅れになるケースがある。

だから、今回受診して良かった。

今後も、辛くなったらすぐに病院に来て欲しい。

と言っていた。


先生の言葉を信じて、よろしくお願いしますと頭を下げ、電話を切った。



電話を終えたあと、しばらく動けなかった。

余命宣告をされるかもしれないと、電話の前から震えていた。

余命宣告ではなかった。

でも、聞きたくない単語が出た。

辛かった。


どうにか、気持ちを切り替えて、仕事に戻る。


妻から、メッセージが届いていた。

病院に行って良かった。

頑張ると書いてあった。


私は、妻を励ました。

大丈夫、絶対に治そう。

良くなったら、妻の食べたい辛味噌ラーメンを食べに行こう。

ほかにも、妻を連れていきたいご飯屋がたくさんあるから、一緒に頑張ろう。


そう励ました。


仕事が終わって、妻に会うと、妻は今朝より明らかに元気になっていた。

妻が言うには、点滴で栄養もらって、元気になったらしい。

子どもたちを迎えに行った時も、妻は明るく子どもたちを迎えていた。


家に帰って、子どもたちと風呂に入り、ご飯を食べる。

妻は、その様子を眺めてニコニコしていた。


元気な妻は、たまに私達の食べているサラダ等をつまむ。


よく噛むんだよ。

妻は、おどけながらガシガシ噛んで、食べていた。


食後テレビを見ている妻の頭を撫でる。


妻の頬がこけてきた。

肌も白い。



妻に先生から聞いたことを話した。


妻はうんうんと言って頷いた。


私は、別に変わらないと言った。

ガンは、治すしかないのだ。

治す以外の選択肢はいらないのだ。

だから、変わらない。

今までどおりガンと戦おう。

そして勝とう。

そう伝えた。


妻は、昨日より力強く頷いた。


色んな人、病院を頼って、絶対に美味しいものを食べに行くと言っていた。

食べたいものリストを作ると言っていた。



妻を連れていきたい店がある。

有名な巨大餃子の店、山奥にある老舗の寿司屋、美味しい焼き鳥屋、妻の食べたがったラーメン屋


一緒にいこう。

行くには、奇跡を起こすしかない。


妻と出会えた奇跡

可愛い子どもたちが生まれた奇跡


それに比べたら、ガンを治す奇跡は、全然奇跡じゃない。


愛ちゃん、一緒に頑張ろうね。

俺は、絶対に諦めないよ。

絶対に君に美味しいご飯を食べさせて、幸せにしてあげるから。