今日の朝から、妻の体調は悪かった。
妻の体調不良は吐き気だけではなく、最近は疲れやすさもある。
休薬期間中なのに、すぐに疲れてしまい、寝てしまう。
顔色も蒼白で、血色は良くない。
昨日、妻の体重を測ったところ、病気が発覚した時から、約一ヶ月で1キロ落ちていた。大学の頃より5キロも下がっている。
ただ、入院中は体調が良くなっていた。
絶食していたのにだ。
そこから、大腸炎が起きた際の吐き気、下痢による脱水の疑いを持つ。
入院中は、点滴で水分補給をしており、それがヒントではないか。
実際、妻が今飲んでいる水分量は、1日で1リットルもない。
食事もあまり取っていない。
実家にいた頃は、具合が悪いと言って、500ミリほどしか飲んでいなかった。
妻に、水分を多く取るように話す。
妻は、なんとなく従ってくれた。
午後になって、妻が昼寝から起きてきた。
体調が悪く、昼ご飯は食べていなかった。
妻に体調を尋ねる。
妻は、泣き出す。
好きなものが黒く、塗りつぶされていく。
もう諦めたいと思ってしまう。
そう言って、ポロポロ涙を流す。
食べることが好きな妻にとって、今のこの環境は、本当に過酷なのだろう。
栄養が満足にとれないので、運動機能にも影響が出ている。
小さな子どもたちと遊べない煩わしさ、焦りもあるのだろう。
泣く妻の手を握る。
負けるな。負けるな。
私も泣く。
泣きながら妻の左手を両手で包み、何度も唱える。
ガンよ。小さくなれ。小さくなれ。
頼むから。
妻と泣く。
ただ泣いていた。
医者が言っていた。
生存中央値は、1年から1年半だと。
だから、わかっている。
5年生きて、子どもの長男のランドセルを見ることや、治すことがとてつもなく難しいことを。
二人で泣いていると、子どもたちが昼寝から起きてきた。
こどもたちの喧騒に当てられて、元気が出てくる。
親であるがために、こどもたちが騒げば、否応なく力が出る。
妻を見る。
先程まで泣いていたのに、既に目にはわずかに光が戻っていた。
妻も、親なのだ。
強い母だと感じた。
その後、焼け石に水かもしれないが、小さなビスケットを食べさせたり、水分をこまめに取らせたりした。
すると、夕方には、妻は買い物に行けるまで回復し、夕食を先程一緒に食べた。
妻の夕食は、卵と豆腐のスープ、妻の好きなキムチと大根の酢漬け、私の作った鶏炒めだ。
しっかり食べて、今は家族一緒にテレビを見て団らんしている。
水分を取らせたのが成功したのかと思っている。
まだ、わからないけど。
今日妻と泣いた。
二人で絶望した。
でも、ここからだ。ここから。
たまには、泣いてもいいじゃないか。
勝つ。勝つんだ。
絶対に負けるな。
…今、妻は大きな声で、
喜久福食べる人ー!!
と言い出した。
妻の大好物だ。
この幸せを絶対の絶対に守る。