公務員風のおじさんは、
相変わらず感情の波を
感じさせない声で言った。
「では異世界に移転されるに
あたって、現世界から
ポイントが付与されます。
...前もって伝えておきますが
こちらは今世における
あなたの生活全般の評価が
基準となっています」
淡々と、だが容赦はない。
おじさんは引き出しから
薄い紙束を一枚抜き出し、
無機質な動作で
カウンター越しに
滑らせてくる。
「はい、こちら。
あなたのポイントは
37です」
言い方に一切の悪意はない。
悪意は無いのだろうが
生活全般の評価という
言葉が、雷真の胸に
ぐさりと刺さる。
(生活全般...評価?
いや、まあ...
フリーターだし、部屋で
異世界もの漁りばっかり
やってたし...。
でもさぁ~言い方ぁっ!)
心の中でだけ突っ込みを
入れる。
しかし
ポイントの割り振りは
異世界ものの重要な場面、
気を引き締めるべきだ。
ポイントを割り振るタイプの
ゲームはほとんど
やってこなかった。
だが、異世界ものは
異世界行が決まるほど
読んできた。
その知識を今
やっと使う時がきた。
雷真は紙に目を落とし
喉をひとつ鳴らした。
そこには、
細かなフォントで
ぎっしりとスキル
一覧が並んでいる。
戦闘、補助、生活、特殊...
そして
その一番下に。
【外見調整】ーー消費ポイント
:高
(...っは?高ぇな!?)
思わず紙を二度見した。
髪色変更、体格補正、
顔立ち微調整...
どれも魅力的だが
消費ポイントが桁が
すでにおかしい。
雷真が付与されたポイントでは
どれもまともに手が届かない。
「あの、これ。
外見変えるだけで
こんなにポイント
必要なんですか?」
つい質問してしまう。
おじさんは、相変わらずの
事務口調で答えた。
「はい。現世での生活態度
実績を総合した
基本評価ポイントですので。
外見の大幅調整は
自己努力不足の補填に
該当しどうしても消費が
増えますね」
完全に悪気ゼロ。
ただの説明。
ただの事務的回答。
だが雷真には、
直球で胸に刺さった。
(お、努力不足...
努力不足っていったな
今...!?
いや言ってない、
言ってないけど...
言ってるも同然だよ!!)
紙に視線を戻す。
戦闘スキルも高い。
生活スキルもまあまあ
高い。
(与えられたポイントじゃ
大した強化全然
できないじゃん...!
どうする俺...このままだと
フリーターのまま
異世界入りになる...!)