第25話 探偵パンチ

体育教官室では、
「黒幕は岩島津の他にいる…」
パンチにそう言われた誠が、懸命に頭の中で思い当たる人物を探していた。

「ええ~?全然わからないッス。って~か、
岩島津さんが、生徒会の行事を失敗させようとしたってことも、
オレには全く理解不能ですよ。だって動機は何なんですか?」

「そいつがわからねぇから、聞き出そうとしたんじゃねぇか。
ヤツは、自分はなんにもやんねぇクセに、やれ効率が悪いの自分だったらああしたこうした、
みたいな事はよく言ってやがったけどな…。
今度みてぇに、何度もマコトんとこに出向いてってのが、よくわからねぇ。」

「あの、ところで、岩島津さんが黒幕じゃないって、どうして判るんですか?」
「あのなぁ、オレも愛称委員会ってとこの一員なんだぜ。
そんで昨日の朝からの動きを整理してみるとだなぁ、ど~もオカシイのよ。
女王ちゃんが、生徒による愛称公募だ何だと言い出したのは、
その委員会の時が初めてで、そいつは昨日の午後の話だ」
「昨日の午後…はい。それで?」
「ハイそれでじゃねぇぞバカやろ。郷がそのことを連絡したのは、
昨日の朝ウチ(朝の打ち合わせ)だったろが!愛称委員会からの指示だと言ってな。
しかも、いいかマコト、おめえもそん時、これは女王ちゃんのアイデアって言ったんだぜ。
女王ちゃんが発案する5時間も前にな。いってぇどういうことだ!」

「ああ、それだったら、すいません。オレ、一昨日の夕方に、前もって愛さんから聞いてたんです」
「なるほどな。まあ、そうだろ。それしか有りえねぇ。だが、郷んとこに来たのは柏田だ。
柏田も、少なくとも昨日の早朝までに、つまりは一昨日の夕方までには知ってたってことだ」
「愛さん、きっと同じ総務の柏田先生にも話してたんじゃないですか?」
「ところがそうじゃねぇんだよ。委員会の席で女王ちゃんが発案した時、
ボロクソにこき下ろしたのが柏田だ。
そんなの誰でも思いつくこった!もう生指部で動いてるぜ~、みたいにな。
事前に聞いたんなら、そん時ボロクソかましてたろ。
だから、結局こういうこった。女王ちゃんのアイデアを事前に聞き出し、
それを柏田に流したヤツがいる。そいつが黒幕だ。」

「岩島津さんは、それができた可能性は無いんですか?」
「ヤツが動き始めたのは、委員会の直後からだ。もし一昨日から知ってたなら、
朝一からおめぇに接触してきたはずだ」
「え~???他に愛さんが、自分のアイデアを話しちゃいそうな人・・・ぶつぶつ・・・。
そう言えば学年会の時には、由紀さんを誘おうとしたっけ。え?由紀さん…。うわ!」

「あん?どうした?何か思い出したか?」
「いえ、何でもありません。」
「てめぇ何慌ててんだ、ゴルァ、何か隠してんだろ!」
「本当です。何も思い出せません」

誠は、愛が高浜由紀に話さなくても、自分が電話で伝えたことが、
もしかすると今回の陰謀に荷担している可能性に気づいた。
もしも由紀が敵で、柏田と組んで愛を陥れようとしたのなら、辻褄が合ってしまう。
由紀をつかまえて、確かめなくてはならなくなった。

「パンチさん、すみません。オレ、ちょっと確かめたいことができました。」
「オイ、ちょっと待てぇ!」
誠はパンチを振り切って、LL教室へ向かう廊下を全力で駆け抜けた。
高浜由紀はすんなり口を割るだろうか、という部分には自信が持てないながらも、
とにかく聞くだけは聞かないと・・・。

そして、由紀の返答は、誠を心底驚かせるものだった・・・。
(続く)