今月11日、
ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCE)より
UMD®Passport サービスが発表されました。
UMD®版ゲームを持っていると、認証措置を経たのちに
同じゲームのDL版が格安で買えるというこのサービス……
ネットでは好意的な評価も見られる一方、
「格安とはいえ(既にUMD®版を持っているのに)
DL版をもう一回買わせるのは変ではないか?」
「二重課金でがめつい」
といった声も少なからず散見されます。
エンドユーザーの立場として考えた場合、正直、
こうした批判をしたくなる気持ちもわかります。
このサービスの目的は言うまでもなく
「UMD®版を買ったかDL版を買ったかで
VITAでプレイできる/できないが分かれてしまう
問題に対する救済措置」
なわけで、そうした視点から考えれば、
タダでサービスを提供するのが順当ではないかという意見も
それほどおかしい感覚ではないでしょう。
実際、ウチの会社でも「値段0円にしたら?」という案があり
結構真剣に検討を重ねました。
ただ、最終的には有料にすべきという結論を出しています。
このサービスが有料にならざるを得ない理由は何か?
今日はその辺の考察をしていきたいと思います。
※あくまで私の考察なので、これが理由の全部とは限りません。
一業界人の個人理解として参考程度にどうぞ。
X X X X
<前提:値段は誰が決めている?>
考察を始める前に前提を一つ。
UMD®Passport の売値は500円~1000円の間に集中していますが
この売値は誰が決めたかといえば、
当然、販売者である各パブリッシャーが決めています。
A社のソフトであればA社が売値を決めているわけで、
間違ってもSCEが勝手に値段を決めたり、もしくは
「この値段幅で決めるように」といった制限を課したりといった
事実はありません。まず、この前提は抑えておいてください。
(ちなみにライセンシーに対して売値の制限を課す行為は、
日本では独占禁止法に抵触する可能性があります)
では、いよいよ本題として、UMD®Passport が有料にならざるを
得なかったいくつかの理由を考えていきたいと思います。
<理由1:売却対策(全社共通)> ←多分最大の理由!
仮に UMD®Passport がタダだったとすると、
サービス認証を受けたのち、中古屋にUMD®版だけを売れば
ユーザーはゲームを手元に残したまま
売値だけを丸々利益として得ることができてしまいます。
つまり、本来「UMD®版を持っている人を対象」とした
サービスのはずなのに、後生大事にUMD®版を売らないで
くれている人が損をすることになってしまうわけです。
こうした売却行為を推奨するようなサービスはメーカーとして
提供できるはずもなく、ゆえに有料とならざるを得ないわけです。
ちなみに、この理屈を成立させるためには
UMD®版の中古買取価格 < UMD®Passport による売値
である必要があり(そうでないと売った方が得だから)、
UMD®Passport の売値が500~1000円であることを考えると、
比較的新しいタイトルでは成立していないことになります。
そのため、この視点に立ってだけ考えた場合には、
「高いどころかちょっと危険な値段設定では?」
というタイトルもあるかもしれません。
自分は基本的にゲームを売らない人間なので
タイトルごとの今の売却相場はよくわからないのですが……
小売関係者の方なら、その辺の判断がつくかもしれませんね。
<理由2:サーバー保守に必要(SCE限定)>
UMD®Passport を提供するには
SCEがサーバーを対応させたり保守点検していく必要があり、
その実費くらいは回収しないと赤字になる……という理由です。
ちなみに500~1000円という値段が実費として適正かは不明です。
ただ、ライセンシータイトル(=SCE以外のタイトル)の場合は
SCEに入ってくるライセンス料は売価の一部だけにすぎないので、
500~1000円を丸々充填できるわけではないことも念頭に置いておいてください。
とはいうものの、これはSCEが
「赤字であろうとユーザーに叩かれるよりはいい!」
と経営判断すれば乗り越えられる壁でもあるので、
有料の理由としては1よりは弱いものかもしれません。
<理由3:事実上の値段強制になってしまう(SCE限定)>
仮にSCEが自社の内製ソフトを0円で統一させてしまうと、
他のライセンシーにも事実上0円を強制することになります。
(例えば、SCEのタイトルがそろって0円なのにB社が1000円だったら、
大方のユーザーは「SCEエラい、B社がめつい」と感じます。
なので、B社も0円にせざるを得なくなる……という理屈です。)
UMD®Passport は、SCEにしてみれば
儲けを出すことを目的としたサービスではありませんが、
他社にまでその理念を強要することは好ましくなく、
率先して「0円が当たり前」みたいな風潮は作れない……
そう、SCEは判断したのかもしれません。
<理由4:SCEに迷惑をかけてしまう(SCE以外限定)>
「前提」でも言ったように、値段を決めるのは各パブリッシャーなので
やろうと思えば「このタイトルは0円!」と設定することは可能です。
ただ、通常、売上の一部はライセンス元のSCEに行くわけで、
0円に設定してしまうと(自分のところはいいとしても)
SCEにすらお金がいかないことになってしまいます。
これは<理由2>においてSCEを苦しめることにつながるため、
その辺空気を読んで「無料にはできない」と判断した会社もあると思います。
X X X X
自分の方で思いつく理由はとりあえずこんなところですが、
もしかしたら、他にも理由はあるのかもしれません。
そのようなわけで、
「二重課金だ」という人の気持ちはとてもわかるのですが、
様々な事情を鑑みれば有料はやむを得ないのかなと思います。
ただ、どれもメーカー側の事情によるものであり、
ダイレクトにユーザーを向いた理由というわけではないため、
そこをどう感じるかは皆さんの自由です。
ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCE)より
UMD®Passport サービスが発表されました。
UMD®版ゲームを持っていると、認証措置を経たのちに
同じゲームのDL版が格安で買えるというこのサービス……
ネットでは好意的な評価も見られる一方、
「格安とはいえ(既にUMD®版を持っているのに)
DL版をもう一回買わせるのは変ではないか?」
「二重課金でがめつい」
といった声も少なからず散見されます。
エンドユーザーの立場として考えた場合、正直、
こうした批判をしたくなる気持ちもわかります。
このサービスの目的は言うまでもなく
「UMD®版を買ったかDL版を買ったかで
VITAでプレイできる/できないが分かれてしまう
問題に対する救済措置」
なわけで、そうした視点から考えれば、
タダでサービスを提供するのが順当ではないかという意見も
それほどおかしい感覚ではないでしょう。
実際、ウチの会社でも「値段0円にしたら?」という案があり
結構真剣に検討を重ねました。
ただ、最終的には有料にすべきという結論を出しています。
このサービスが有料にならざるを得ない理由は何か?
今日はその辺の考察をしていきたいと思います。
※あくまで私の考察なので、これが理由の全部とは限りません。
一業界人の個人理解として参考程度にどうぞ。
X X X X
<前提:値段は誰が決めている?>
考察を始める前に前提を一つ。
UMD®Passport の売値は500円~1000円の間に集中していますが
この売値は誰が決めたかといえば、
当然、販売者である各パブリッシャーが決めています。
A社のソフトであればA社が売値を決めているわけで、
間違ってもSCEが勝手に値段を決めたり、もしくは
「この値段幅で決めるように」といった制限を課したりといった
事実はありません。まず、この前提は抑えておいてください。
(ちなみにライセンシーに対して売値の制限を課す行為は、
日本では独占禁止法に抵触する可能性があります)
では、いよいよ本題として、UMD®Passport が有料にならざるを
得なかったいくつかの理由を考えていきたいと思います。
<理由1:売却対策(全社共通)> ←多分最大の理由!
仮に UMD®Passport がタダだったとすると、
サービス認証を受けたのち、中古屋にUMD®版だけを売れば
ユーザーはゲームを手元に残したまま
売値だけを丸々利益として得ることができてしまいます。
つまり、本来「UMD®版を持っている人を対象」とした
サービスのはずなのに、後生大事にUMD®版を売らないで
くれている人が損をすることになってしまうわけです。
こうした売却行為を推奨するようなサービスはメーカーとして
提供できるはずもなく、ゆえに有料とならざるを得ないわけです。
ちなみに、この理屈を成立させるためには
UMD®版の中古買取価格 < UMD®Passport による売値
である必要があり(そうでないと売った方が得だから)、
UMD®Passport の売値が500~1000円であることを考えると、
比較的新しいタイトルでは成立していないことになります。
そのため、この視点に立ってだけ考えた場合には、
「高いどころかちょっと危険な値段設定では?」
というタイトルもあるかもしれません。
自分は基本的にゲームを売らない人間なので
タイトルごとの今の売却相場はよくわからないのですが……
小売関係者の方なら、その辺の判断がつくかもしれませんね。
<理由2:サーバー保守に必要(SCE限定)>
UMD®Passport を提供するには
SCEがサーバーを対応させたり保守点検していく必要があり、
その実費くらいは回収しないと赤字になる……という理由です。
ちなみに500~1000円という値段が実費として適正かは不明です。
ただ、ライセンシータイトル(=SCE以外のタイトル)の場合は
SCEに入ってくるライセンス料は売価の一部だけにすぎないので、
500~1000円を丸々充填できるわけではないことも念頭に置いておいてください。
とはいうものの、これはSCEが
「赤字であろうとユーザーに叩かれるよりはいい!」
と経営判断すれば乗り越えられる壁でもあるので、
有料の理由としては1よりは弱いものかもしれません。
<理由3:事実上の値段強制になってしまう(SCE限定)>
仮にSCEが自社の内製ソフトを0円で統一させてしまうと、
他のライセンシーにも事実上0円を強制することになります。
(例えば、SCEのタイトルがそろって0円なのにB社が1000円だったら、
大方のユーザーは「SCEエラい、B社がめつい」と感じます。
なので、B社も0円にせざるを得なくなる……という理屈です。)
UMD®Passport は、SCEにしてみれば
儲けを出すことを目的としたサービスではありませんが、
他社にまでその理念を強要することは好ましくなく、
率先して「0円が当たり前」みたいな風潮は作れない……
そう、SCEは判断したのかもしれません。
<理由4:SCEに迷惑をかけてしまう(SCE以外限定)>
「前提」でも言ったように、値段を決めるのは各パブリッシャーなので
やろうと思えば「このタイトルは0円!」と設定することは可能です。
ただ、通常、売上の一部はライセンス元のSCEに行くわけで、
0円に設定してしまうと(自分のところはいいとしても)
SCEにすらお金がいかないことになってしまいます。
これは<理由2>においてSCEを苦しめることにつながるため、
その辺空気を読んで「無料にはできない」と判断した会社もあると思います。
X X X X
自分の方で思いつく理由はとりあえずこんなところですが、
もしかしたら、他にも理由はあるのかもしれません。
そのようなわけで、
「二重課金だ」という人の気持ちはとてもわかるのですが、
様々な事情を鑑みれば有料はやむを得ないのかなと思います。
ただ、どれもメーカー側の事情によるものであり、
ダイレクトにユーザーを向いた理由というわけではないため、
そこをどう感じるかは皆さんの自由です。