※注意:

今回の記事中には、「時のオカリナ」のストーリーを

微妙にネタバレするかもしれない表現があります。

「時のオカリナ」未プレイの方で、ネタバレを気にされる方は

クリア後に読むことをおすすめします。


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前回 「時のオカリナ」 を紹介したのに関連して、

今回はとあるコミックをご紹介します。

それがこちら。


ゲーム屋さんの徒然日記-乱丸ゼルダ

「ゼルダの伝説」

「リンクの冒険(1)~(2)」


いずれも乱丸という漫画家の作品で、

ディスクシステムの初代ゼルダと、

その続編のリンクの冒険をベースとした漫画です。

(続編なので登場キャラクターも共通)


この漫画を抜きにして、ゼルダを語ることはできない!

実はブログ開始当初からこの漫画を紹介したかった!

……と、個人的には、そのくらい好きな漫画です。



ゲームコミカライズ漫画というものは、

ただでさえ移り変わりの激しい漫画業界においても、

特に典型的な消耗品にされやすい分野だと思います。


しかしそんな中、乱丸ゼルダシリーズは

ひときわ異彩を放っていました。


まず前提として、この漫画は完全なストーリー漫画でした。


当時「ゲームコミカライズ」というと、どちらかといえば

攻略漫画のようなタイプが主流でしたが、

乱丸ゼルダは完全にオリジナル街道をばく進し、

逆に言うと攻略には何の役にも立たない漫画でした。


ダンジョンの攻略にはそれほどページを裂かず、

オリジナルキャラクター達との人間ドラマや

サイドストーリーが話の中心でした。


しかも、少年漫画ということで絵こそかわいく、

言葉も平易なものが使われているのですが、

話の中身自体はかなりダークなところも。


魔物に目をつけられるのが怖くてリンクに協力しない

(むしろ冷たくする)村人がいたり、仲間だったはずのキャラが

自らの欲望に負けてリンクを殺そうとしてきたりと、

そんな濃厚なゲーム漫画、当時他にはありませんでした。


出血描写も割と容赦なく、リンクが全身血まみれで戦う様は

子供ながらに戦慄を覚えたものです。

(しかも少年漫画にありがちな気安い出血ではなく、

傷口を想像させるかなり痛そうな血でした。)

CEROだったら「C」は確実というレベルです。


と、これだけ書くとすごく暗そうなイメージなのですが、

そんな描写ばかりではなく、助けた子供たちに感謝されたり、

何よりゼルダ姫が魅力的で好感が持てるキャラだったりと、

救いを感じるシーンもバランスよく織り交ぜていて、

とにかく先が気になる良きファンタジー漫画だったのです。


リンク自身の成長も丁寧に描かれていて、

正義感だけが強いただの無鉄砲坊やだったのが、

メキメキと強く優しきヒーローに成長していきます。

(今日、私がクリエイターとしてヒーロー像を想像する際には、

この乱丸リンクが少なからぬ影響を与えていると思われます)



そして、さらに興味深いことに……


乱丸ゼルダ独自のオリジナル要素の中には、

後の本家ゼルダである「時のオカリナ」に影響を与えた?

と勘ぐってしまうような部分もいくつか存在しています。


まず、ゼルダ姫の立ち位置。


ディスクシステム時代のゼルダといえばただラストシーンで

待っているだけで、性格設定も何もないただのお姫様でした。


しかし、乱丸ゼルダは知的かつ快活な性格で、

リンクの冒険にも積極的に関与し、彼を支えていきます。

そしてなんと、変身魔法が使えるという設定までありました。

(ここまで言えば、わかる人は「あー」と思いますよね?)


それから、ガノンの正体。


ネタバレになるので多くは語れませんが、

乱丸ゼルダに出てくるガノンは、

ディスクシステム時代の単純な豚ガノンではなく、

むしろ「時オカ」の雰囲気に近い正体設定を持っています。



もちろん、これらの一致はただの偶然かもしれません。



しかし、偶然にせよそうでないにせよ、

未来のゼルダ像をかなり先取っていた漫画であることは確かです。



ぜひ皆さんも……とすすめたいところなのですが、

この漫画、非常に残念なことに

「リンクの冒険」の最終巻(3巻)だけが単行本化されていません。

雑誌上ではきちんと最終話まで連載されていたのですが、

出版社側の都合で最後の一巻だけ単行本が出ていないという、

非常に不遇な扱いを受けています。

(今でもファンは多く、「復刊ドットコム 」でも交渉対象となっていましたが、

 残念ながら交渉決裂してしまったようです。)


そして既刊分(上の写真にある3冊)も今となっては結構レアで、

探しても簡単には見つからないかもしれません。

もし古本屋などで見かけることがありましたら、

個人的には、迷わず買いをおすすめします。


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<おまけ> ※単行本未収録分を探している方へ


私と同じような乱丸ゼルダのファンで、

既刊3冊以降の続きが気になっている方のために、

未収録分の一部が読める場所を以下に紹介いたします。


現代マンガ図書館  (東京都新宿区早稲田)


こちらの図書館に、

乱丸ゼルダの掲載されていた当時の雑誌

「(月刊)わんぱっく」が多数保管されています。


閲覧だけでなく、やや割高ですがコピーも可能です。


ゲーム屋さんの徒然日記-乱丸ゼルダ未収録分
▲単行本未収録部分の一部

(未収録部分を全部コピーすると7,000円くらいかかります)


しかし非常に無念なことに、

ここに来ても未収録分のうち2話分は保管されておらず、

しかもそのうちの一つは最終話なのです。


最終話は私も22年前に一度読んだきりで

さすがに記憶が曖昧なのですが、

伏線がきっちりと回収され、清々しい読後感が残る

素晴らしいラストだったという印象があります。


単行本が出ると思って

雑誌を捨ててしまったのが本当に悔やまれる……。


いつかどこかで出会えないかなぁ……


心からそう思い続けている一冊です。



★2011/8/10 追記

↓のcubeさんからいただいたコメント情報のおかげで、

 最終話を含む2話分も読むことができました!

 これで全話コンプリートです。

<cubeさん、本当にありがとうございました。>


私と同じように未収録分を探していたという方は、

↓のコメントや、こちらの記事 を参考にしてください。