今日は久々に平日休みがとれました。
たまにはゲームから離れた刺激を受けようと、
ちょっと前から気になっていた
丸の内の「ヴィジェ・ルブラン展
」にGO。
※といいつつ、後半、ちょっとだけゲームの話になります。
都会のど真ん中にありながら、シックで美しい建物です。
「弥太郎
、立派になって……」なんて思ってしまいました。
さて本題の「ヴィジェ・ルブラン展
」。
ヴィジェ・ルブラン
は、18世紀後半に活躍した女性宮廷画家で、
有名なマリー・アントワネットの肖像画などを描いた人物です。
▲「マリー・アントワネット・ジョゼファ・ジャンヌ・ド・ロレーヌ・ドートリシュ」
通称マリー=アントワネット。教科書にもよく載る絵ですね
カタログによると、アントワネットは嫁いですぐ母親の
マリア=テレジアに自分の肖像画を送る旨を伝えたものの、
なかなか満足のいく絵が仕上がって来なかったとか。
様々な画家たちがアントワネットの肖像に挑んだものの、
アントワネット的にはどれも気に入らずNG判定。
1778~79年に「ヴィジェ・ルブラン」が描いた肖像画が
ようやく彼女を満足させたそうです。
約束から実際にウィーンに絵を送るまで足掛け9年。
(マリア=テレジア、気が長いですね……w)
これ以降、ヴィジェは王妃のお気に入りの画家となり、
親交を深めていったそうです。
※ただし、展示されていた絵はその時の絵ではなく、
後にヴィジェ本人が描いたレプリカです。
▲「ガブリエル・ヨランド・クロード・マルティヌ・ド・ポラストロン」
通称ポリニャック公爵夫人。フランス貴族のフルネームは舌かむわ!
「ベルばら」を知っている方にはおなじみの人物ですね。
アントワネットに重用された取り巻きの一人です。
アントワネットが彼女に対し湯水のごとくお金を費やしたことが、
革命の引き金の一因になったといわれています。
漫画では
「文句があるなら、ベルサイユへいらっしゃい!」の
名言が有名で、高慢な性格として描かれていますが、
この絵からは可憐な印象を受けました。
(ただ、確かに頭はよさそうですね)
革命時、アントワネットを見捨ててさっさと逃亡した
イメージの強いポリニャック公爵夫人ですが、
伝承によると、当のアントワネットは彼女の逃亡を
助けた職位長に心から感謝し、お礼にこの絵を授けたそうです。
(そんなことしたら手助けがバレちゃうと思うんですが……)
本展覧会の主人公。これは自画像の一つです。
アントワネットより美人に見えるのは私だけでしょうか……。
当時女性に対して非常に門戸が狭かった
「王立美術アカデミー」に王妃の力添えもあって入会。
一躍人気画家となりますが、フランス革命後は
王妃に重用されたことが仇となり、身の危険を感じて国外に亡命。
イタリア、オーストリア、ロシアを転々とします。
風貌が美しかったのは確かなようで、彼女自身、
行く先々で自画像を描いては実力と魅力を同時にアピール、
亡命先でも名声を得ています。中々世渡りがうまく、
また人にも愛される「デキる」女性だったようです。
フランスに残った多くのライバル画家たちの署名活動によって、
彼女の亡命は実は亡命ではなく研修だったと認められ(笑)、
脱出から11年、最終的にはフランスに帰ってくることができました。
人間、やはり最後にモノをいうのは人徳ですね。
X X X X
ところで、今回の展覧会で初めて知ったのですが、
当時、絵画にはそのテーマによって明確に
「格付け」というものが存在していたそうです。
具体的には風景画や肖像画は格下で、
歴史的シーンの叙述画、中でも神話を描いた絵が
芸術的に格上とされていたとか。
で、格上の絵には神(裸体)が登場するわけですが、
当時女性は男性の裸モデルを雇うことが許されなかったため、
肉体デッサンの練習機会に恵まれず、
ゆえに格上の絵に挑戦しづらくなっていたという……
今から聞けばつっこみどころ満載の事情により、
女性が一流画家を目指すのは困難な道のりだったようです。
この話、まるで笑い話のようですが、
ふと、我々も知らず知らずのうちにゲームを
「格付け」してはいまいか……そんな思いにもかられました。
本来嗜好品であるはずの「ゲーム」。
もちろん出来不出来の違いや、
好み、好みじゃないの差はあって当然ですが、
テーマによって「○○より●●が上」ということはありません。
ですから、十把一絡げに
「キャラクターゲームよりも、オリジナルゲームの方が格上である」
「ギャルゲーよりも、RPGの方が格上である」
「ニッチなゲームよりも、予算をかけた大作ゲームの方が格上である」
などと(無意識でも)考えていたとしたら、それは間違っています。
これは現場でゲームを制作している人たちにこそ意識してほしいことで、
知らず知らずのうちに、自分の作っているソフトに格をつけてはいないか……と振り返ることは重要だと思います。
ブランドを意識し、誇りを持つのはよいでしょう。
しかし「これはゲーム業界において格上の仕事だ」と思ってしまっては、
そこに驕りが生まれます。
予算やオーダーに縛られ、妥協しなければならないこともあるでしょう。
しかし「これは格下の仕事だ」と思ってしまっては、
そこに卑下が生まれます。
大手企業で大作ゲームにかかわり続けている人。
中小企業で下請け仕事ばかりしている人。
どちらの人にも当てはまる注意事項ではないでしょうか。
人物画であろうが歴史画であろうが確かな実力を見せ付け、
周囲に認められたヴィジェ・ルブランから、
そんなメッセージを(勝手に)受け取りました。
※補足:
本記事内の絵画の写真は購入したカタログから写したものです。
会場内での写真撮影は禁止されています。