パブリッシャーがディベロッパーにゲーム制作を依頼する時、
ドカッと全額を前払いすることはまずありません。
形ができてないものに数千万~億単位のお金を払うのは
バクチが過ぎるので、まぁ当然といえば当然です。
とはいえ、できあがるまで一銭も支払われないのでは、
ディベロッパーも参ってしまいます。
そこで通常は、開発途中にいくつかの段階を設け、
各段階ごとに途中状態のROMを納品し、その都度少しずつ
分割して支払っていくという方式が通例となっています。
分割回数は契約ごとにまちまちですが、
一般的には、「評価版」「α版」「β版」「マスター版」と呼ばれる
各段階を区切りとすることが多いです。
※さらに細かく、「プレα」「プレβ」などを設けることもあります。
それぞれがどのような状態を指すかについては、
実は統一基準があるわけではなく、会社ごとにまちまちです。
(まちまちゆえに、契約時、双方でよく確認しておかないと
トラブルになることもあります。)
ですが、最も一般的に言われている感じでは、
おおよそ以下のように区分されています。
●評価版
そのゲームの最も核となる部分だけを暫定的に作ったもの。
ゲームの触り心地や雰囲気を確かめるのが目的。
ここで「なにか違うな」ということになると、
大幅な軌道修正が発生したり、
最悪企画自体が中断になることもある。
まがりなりにも動くゲームにしなくてはいけないので、
実はここまで持ってくるのも結構大変。
しかし、作り始めから3ヶ月程度で要求されることもある。
●α版
ゲームの基本的な要素がほぼ一通り組み込まれたもの。
あくまで「要素」であって「物量」ではない。
わかりやすくマリオに例えるなら、1-1しか遊べないが、
1-1だけは製品と同じようにしっかり遊べる……という感じ。
ただし、バランス調整までは手が回っていないことが多く、
敵が異様に堅いなど、楽しく遊ぶにはまだまだ難がある。
●β版
全ての要素、物量が入りきった状態。
開発者的にはほぼできたと思っている状態。
しかし、まだバグ取りがきちんとできていないため、
いろいろと目に見えない不具合を残している。
※オンラインゲームの場合はここで
公開テスト(=βテスト)に入ることが多い。
●マスター版
バグ取りも終わった状態。PCソフトならこのまま製品化へ。
コンシューマーソフトの場合、この後ハードウェアライセンス企業による
最終チェックが行われ、指摘があれば修正を行い、
最終的な承認を得てから製品化する。
以上のように段階を細かくわけるのには、
金銭面以外でも、非常に重要な意味があります。
パブリッシャーにとってみれば、
製品が順調なペースで開発されているか、
自分たちの望むゲームに近づいているかを
細かく確かめることができます。
これはディベロッパーとしても助かることで、
全部できあがってからちゃぶ台を返されるような
悲劇を回避することができます。
さらには、要所要所に関所を設けることで
開発ラインに緊張感が生まれ、
スケジュールの遅れが発生しにくい
(あるいは、発生しても修正しやすい)
というメリットもあります。
現場からすれば数ヶ月に一回修羅場を迎えることになるので、
正直結構きついものがあるのですが、全体的に見ると
この分割システムは必要不可欠といえます。
【補足】
パブリッシャーとディベロッパーを全て自社で行う場合でも、
αやβといった段階自体は設けるのが普通です。
またパブリッシャー内では、各段階において
ゲームのできあがり具合を役員等が審査する
「審査会」が行われ、そこで出た意見が
現場にフィードバックされることもあります。