お店の前で、号泣する私を、
「どうぞ」
と、中へ通してくれた。
狭い、通路。廊下。たっくさんの種類のお花。
濃い、香り。
「ヒック、ヒック……」
!
お部屋の中も観葉植物で、いっぱいだった。
「うち、代々の花屋なんです」
そう言って、
泣き止んだ私に、温かいコーヒーを淹れてくれた。
「……いただきます」
美味しい。少し、甘い。
「子供の頃は嫌でしたね。いつも両親は手が荒れていて。痛そうで」
「……そうですか」
「僕、全然荒れないんですけどね」
ふっと、自分に呆れたように、笑う。
「天職だったんだなって、今なら思えます」
「……素敵ですね」
「え?」
「私なんて、ふさぎ込んじゃいました。
職場でも、八つ当たりのようにしてしまったり。家族の前で、泣いてしまったり」
「……お名前、教えてもらえますか?」
ドキン
「薔子です」
「薔子さん。僕、太陽です。太陽がないと、植物は育たないからって」
「太陽さん……。私は、薔薇の花です。しょう……子です」
「薔薇、やっぱり一番好きな花ですか?」
「そうですね……
好きです」
ドキッ……
瞳と、瞳が合う。
優しく、微笑んでる。
太陽さん。
パッ!!
慌てて、視線を逸らしてしまった。
……見つめあって、
好きです、なんて
恥ずかしいよ。
「好きなもの、他にもありますか?」
「へ?」
「僕は結局、花が好きです」
「………私も」
薔薇、好き。
にこ。
一緒に、微笑む。
「薔子さん」
「……太陽さん」
「僕達」
………………
—僕達、生まれてきて良かったんです—
太陽さんは、
呟くように、
そう言った。
