宗教事件
宗教事件神の十戒の復活を求める運動事件 2000年3月、東アフリカの内陸部にあるウガンダ共和国で、1,000人を超える「神の十戒の復活を求める運動」信者が死亡した。その半数以上は教会の中で炎につつまれ焼死。身元も分からぬほど炭化した、無数の遺体から煙がくすぶりあがる映像は世界中を駆け巡り、大きな衝撃を与えた。 警察は当初、カルト教団の集団自殺との見解を示した。なぜなら、「神の十戒の復活を求める運動」は、"99年12月末日を「この世の終わり」だ"と説く教団だったからである。しかし、捜査の結果、信者全員が殺害されたことが判明。教祖と数人の使徒たちによる、世にも恐ろしいカルト集団殺人事件だったことが明らかになった。 世界中を震撼させた事件を起こした「神の十戒の復活を求める運動」の教祖たち。彼らは一体どのようにして教団を立ち上げ、そして破滅していったのだろうか。カトリック信者がカルトの教祖に 「神の十戒の復活を求める運動」は、89年、ジョゼフ・キブウェテレによって立ち上げられた。32年にウガンダに生まれたと伝えられているジョゼフは、ウガンダ国内の政治と宗教が激変する時代を生きてきた。国民の60~75%がキリスト教徒だとされるウガンダでは、当時、「奇跡」や「聖母の出現」に焦点を当て活動を行っていた宗教グループが多かったという。そのため、ジョゼフは、「奇跡」を謳うカルト的な教えに強い影響を受けたと見られている。 長年に渡り敬虔なカトリック信者であり、ローマンカトリック教会の神父をしていたこともあったジョゼフだが、84年、突然、自宅にある電話やテレビなど電化製品を通して、聖母マリアと直接交信できるようになった、と言うようになった。この発言が問題視され、ローマンカトリック教会を破門、追放されたのだが、それでも彼は主張を変えなかった。 89年、ジョゼフの元に、クレドニア・ムウェリンデという女性が訪れた。クレドニアは「聖母マリアから、あなたを我々の家族として受け入れるよう、指示された」とジョゼフに伝え、かくして2人は「神の十戒の復活を求める運動」を立ち上げたのである。会話は一切禁止、コミュニケーションは手話のみ ウガンダの南西部、カンヌグの郊外に「神の十戒の復活を求める運動」の教会本部を設立すると、そこで彼らは、「99年12月31日にこの世が滅びる。信じるものだけが天国に行くことができる」という聖母マリアの啓示を受けたと伝え、信者を募った。信者は貧しい層を中心にたちまち集まり、あっという間に1,000人を超えた。ちなみに、この世の終わりだというメッセージを受けたのは、クレドニアだという説が強く、彼女は11年度イグ・ノーベル賞「世界の終わりを不正確に予言した人々」という数学賞が贈られている。 「神の十戒の復活を求める運動」に入信した者は、土地や家、全ての所有物を売却し、その金を教会に寄付することが義務付けられた。そして、男、女、子どもに別れて生活するよう命じられ、家族であっても互いにコンタクトを取ることを固く禁じられた。食事は1日に2回、石鹸の使用は禁じられ、性交渉も固く禁じられた。信者は全員緑色のユニフォームを、6人の男性使徒と6人の女性使徒は黒のユニフォームを着用したという。 「神の十戒の復活を求める運動」独特のユニークな規則もあった。それは、会話することを一切禁じる、というもの。「人間は嘘をつく」という理由から、彼らは手話で意思疎通を行い、信者以外の人に対してもそうするよう強要された。 信者の数が増え、規律が整うと、彼らは教会の周りに学校、店、農場を作り、村をフェンスで囲んだ。地元警察は「信者たちはみな真面目で、よく働き、危害はない」「周囲の村に対して、お手本的に良いコミュニティー」だとして、教団の村を歓迎。周囲の貧しい人々も次々と入信するようになり、一説によると4,000人近くの信者がジョゼフを敬っていたという。教祖自らが手を下した この世の終わり しかし、99年の大晦日が何事もなく過ぎ去り、2000年が始まると、信者の中に疑いを持つ者が現れるようになった。ジョゼフとクレドニアは、「マリアからXデーを延ばすという啓示を受けている」と主張し、その日は「3月17日」だと信者たちに伝えた。しかし、2月に入ると、2人は牛などを売却し始め、3月になると、大量のコカコーラを購入。このコーラに毒を混ぜ、信者に飲ませ殺害したと見られている。 3月17日、朝の10~11時ごろ、信者たちはジョゼフらに「もうすぐ、この世の終わりがやって来る。一緒に天国へ行くために教会に集まれ」と命じられ、新しく建設されたばかりの教会に集められた。そして、入り戸を厳重に閉めると、爆発音と共に火の手があがった。こうして教会内に閉じ込められた信者は全員焼死したのだ。遺体は炭化したものや完全に灰になってしまったものばかりで、正確な死者数は分かっていないが、500人近く亡くなったとされている。