できる限り本をインターネットで買いたくないのですよ。
好きな作家、好きな本ならなおさら、
「わたしと本のタイミングを待って出会いたい」。
その日がわたしにとって一番「読むのに適した日」だと思うから。
 
有間しのぶはわたしの「心の作家」のひとり。
『その女、ジルバ』の連載が2011年に始まっても雑誌は我慢して読まず、
単行本が出ても全巻揃ってから読みたいと我慢して読まず、
完結してからも「書店で出会いたい」と
ずっとずっとその時を待っていたのです。
 
その日が今日、来た。あとは最終巻だけ。
 

 
20代前半、引きこもって暮らしていた頃は起きている間じゅう本を読んでいたものです。
有間しのぶはその頃に4コマ漫画雑誌で知り、単行本を買い漁って貪り読んだよね。
ギャグ漫画だけど、「有る間、しのぶ」んだよ?
花のように美しいはずの20代に鬱々と家に引きこもっていたわたしの嗅覚は研ぎ澄まされており、
「絶望を知って希望を描くひと」の匂いをくんすかくんすか嗅ぎつけたのです。
わたしはその希望の匂いを支えに、少しずつ社会復帰していった。
 
 
・・・その後、なんとなんと、ブログを通じて有間さんとおデートをして頂く僥倖を得て、
同人誌として出された作品を頂いて、
くんすかくんすかは当たっていた、とはっきりと知る。
有間さんは覚えている訳ないと思うけど、
「あなたはプロの漫画読みだ」と言われたことが今でも嬉しくて。
大ファンの作家さんに褒められて死ぬほど嬉しくて、大事に宝箱にしまってある笑自慢!何回も書きたい!

そんなことで、自分の読書人生、漫画人生のなかで今日はなかなかに重要ポイントな日です。
 
 
有間しのぶさん、遅いお祝いですが
手塚治虫文化賞大賞、おめでとうございます。
この作品を読むの、8年待ちました。
お会いしたさいに「かけないときはどうするんですか?」というわたしの問いに
それまでの柔らかな笑顔から一瞬、毅然とした顔で
「かけない時なんて、ないのよ」
とおっしゃったのを忘れられません。
 
今日、『その女、ジルバ』を読めるだけの自分になったんだと思うのです、
と内容をよく知らないでも、堂々と言える、
これが孤独に本と睦みあってきた歴史の積み重ね。しやわせ。