ヒプノセラピーで小さい私に会いに行った話の
③です
①、②はこちらから↓
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すうちゃんは縁側に座っていた。
今日こそは話しかけよう、そう決めて
わたしはすうちゃんの隣に座った。
うつむいていたすうちゃんの視線が
少し揺らいだ。
「こんにちは。
今日はすうちゃんとどうしても
お話をしたくてきたよ。」
すうちゃんは顔をあげてわたしをみた。
「今、どんな気持ち?
どんなことを考えてる?
何でも話していいの。
だって、わたしはすうちゃんだから。
誰よりすうちゃんのことを
知ってるよ。
タイムマシンに乗って
未来の世界から会いに来たんだよ。
ドラえもんみたいでしょう?
素敵な道具もたくさん持っているんだから!」
そう言うと驚いたように目を開いて
少し笑った。目の奥に光が灯ったのを
感じてわたしは嬉しくなった。
そしてすうちゃんはホッとしたように
話し始めた。
「わたしね、本当はとっても悲しかったの。
おとうさんもおかあさんも、ばあちゃんも
みんな大好きなのに。みんな優しいのに。
お父さんがばあちゃんにきつい言葉で話すたびに
心がぎゅーって痛くなった。
そしてお父さんは悲しそうにしてるの。
どうしてあんなこと、言ったんだ…ってね。
言葉にはしないけど、わたしにはわかる。
ばあちゃんは、どうせばあちゃんなんて
いないほうがいいんだ…って呟いてた。
そんな言葉を聞くたびに、
ホントにいなくなっちゃったらどうしよう?って 怖かったの。
そしてお母さんは2人の間で一生懸命
頑張ってるのに、ばあちゃんは
こころを閉じたまんまだったの。
でも、わたしはだれの味方もできないの。
誰かの味方をしたら、誰かが悲しくなるから。
だから気づかないフリをして
いるしかないの。
なんにもできないの。」
望遠鏡でみた、なんにもできない…
その言葉の意味がわかった。
すうちゃんは自分を責めていたんだなぁ。
気づかないフリしかできない
無力な自分に傷ついていたんだなぁ。
「そっか。」
わたしはそう言って
すうちゃんを抱きしめた。