2月1日(月)まで、新宿伊勢丹で催されているイベント「サロン・デュ・ショコラ」のために来日しているショコラ界の重鎮ファブリス・ジロット氏の、新作発表&試食会に行ってきました。
少し長くなりますが、詳細をレポートさせていただきます。
サロン・デュ・ショコラSalon du Chocolatは、1995年にパリで始まった世界最大のチョコレートの祭典です。日本で開催されるのは今年で8回目。伊勢丹新宿店には、約15カ国から、約70ブランドものショコラが集まり、来日した天才たちのショコラ製作実演も見られるとあって、6階の会場は熱気にあふれています。
ファブリス・ジロット氏は、フランスでも数少ないショコラティエのM.O.F.(フランス国家最高職人)を1991年当時、史上最年少の26歳で取得した天才ショコラティエです。パティスリーを経営する父のもとシャンパーニュ地方のトロワで生まれた彼は、カカオの香りに囲まれて育ち、16歳から修行を始めました。現在はブルゴーニュ地方のディジョンにアトリエとショップをもっていて、パリへは進出していません。
2009年、フランスのショコラ愛好家クラブClub des Croqueurs de Chocolat(クラブ デ クロカー ドゥ ショコラ)で、最高位の5タブレットを獲得しました。5タブレットに選ばれたのは世界でたったの9人だそうです。
オーソドックスなものから、地元ブルゴーニュ産のベリーを使ったガナッシュ入りまで、完成度の高いボンボンショコラが特徴です。
「ボンボンショコラ」とは、一口サイズのチョコレートの総称で、ドイツやスイスでは「プラリネ」と呼ばれています。中央にガナッシュを入れて高級食材のトリュフに似た球状にしたチョコレート「トリュフ」もボンボンショコラの一種です。
今回は、ジロット氏が3年の歳月をかけて完成させたという新作の、満を持しての発表会です。日本での新作発表は初めてで、雲の上にいるような気持ちだとのこと。
新作の名前は「AQUACAO(アクアカオ)」、スペイン語の「水」と「カカオ」を組み合わせて名づけたそうです。デザインにはマヤ・アステカ文明のモチーフを使っています。
カカオは産地によって味が違います。アクアカオはナンバリングされていて、「No.1 ベネズエラ」、「No.2 ペルー」、「No.3 赤道地帯」、「No.4 コロンビア」という、4種の味を楽しむことができます。
さて、いよいよ試食会です。ジロット氏自らがお皿の上の並び順を指定し、常温に戻してからの試食とするために早めに会場に持ち込むなど、準備にも細やかな配慮がなされたとか。
ジロット氏が指定した試食の順番は、まずはブルゴーニュのフルーツのジュレを使った「クルール・ド・ブルゴーニュ」から「ペッシュ・ド・ヴィーニュ」、そして「フランボワーズ」。新作のベネズエラ産カカオを使った「アクアカオ」、そしてコロンビア産カカオの「アクアカオ」。用意された飲み物は水のみというのも氏のこだわりです。
こんなに真剣にチョコレートを味わったのは初めてかも知れません(笑)。
一粒目:クルール・ド・ブルゴーニュ/ペッシュ・ド・ヴィーニュ
ペッシュ・ド・ヴィーニュは「ブドウ畑の桃」という意味で、桃に似た小さなフルーツです。果肉は赤く、もともとブドウ畑の周りに自生していたそうですが、今は栽培されているのだとか。ショコラは、「ブドウのエキスを吸い上げた」というイメージで作ったそうです。
口に入れると、説明されたとおり、2層のチョコレートとその中央に挟まれたフルーツのジュレの食感が同じなんです! 口の中でチョコレートとフルーツが同時に溶けて絶妙なハーモニーです。そして、ほんのり甘いフルーツの香りに、少しだけ苦みがあります。
二粒目:クルール・ド・ブルゴーニュ/フランボワーズ
こちらは日本でもポピュラーな味、フランボワーズ(ラズベリー)。味はよく知っているフランボワーズですが、やはり、食感が素晴らしい。口の中で、チョコレートの強い甘みと、少し酸味のあるフランボワーズの風味が徐々に溶け合います。
実は、「クルール・ド・ブルゴーニュ」は、2007年に「テロワール・ド・ブルゴーニュ」として発表されました。ところが、商品名の商標登録を忘れたためにコピーされてしまったのだとか!! そのため、デザインと名称を変えて再発売されたのです。でも、食感、味の素晴らしさは変わりません。
クルール・ド・ブルゴーニュの試食が終わったところで、会場から質問が投げかけられます。
まずはカカオの選び方について。各ショコラティエの感性の見せどころで、フルーツの香りを消さない、インパクトの弱いものをということで、カカオ分58~60%というマダガスカル産のカカオを使用したそうです。
味の構想については、まず、頭の中で味を組み立てるのに時間をかけるそうです。スパイスを使うときには、スパイス自体がチョコレートに負けないインパクトがあるので早く作れますが、フルーツや花は香りがデリケートなので、どの状態でバランスを取るのかという見極めがとても難しいのだとか。
ここで、新作「アクアカオ」の試食前に、ジロット氏からのメッセージです。
「アクアカオ」は、本来ならば2009年に発表しようと思ったもの、完成までに時間がかかって2010年の発表となりました。今回はすぐに商標登録を済ませたとか。「オフィスにはショコラティエよりも弁護士のほうが出入りしていたかも」と、会場を和ませるのもジロット氏のお人柄です。
マヤ・アステカ文明時代、人々はチョコレートをドリンクとして飲んでいました。カカオ豆をすり潰し、水とともに煮立てていたのです。アメリカ大陸を発見したコロンブスはそれを飲み、「ひどい飲み物」と記述したとか。その後、エルナン・コルテスは「これを飲むと数日間何も食べなくても大丈夫」と評したそうです。
「アクアカオ」は、水とカカオという原点に戻ったのです。とはいえ、液体ではなくジュレにするテクニックが難しく、多くの時間がかかりました。流れるほど柔らかくては困るし、カットできる硬さが必要なうえ、1週間後にも固さが変わらってはいけないからです。
このようなバックグラウンドから、カカオも、コロンビア、ベネズエラ、ペルー、エクアドルといった南米・中米産のものが使われています。
さて、いよいよ新作の「アクアカオ」の試食です。その味は……、
三粒目:アクアカオ/No.1 ベネズエラ
スパイシーでウッディな中に、ほのかにリコリス(甘草)の香りという説明ですが、リコリスに馴染みがない私にはその微妙な香りはよく分かりませんでした(汗)。が、驚かされたのは食感です。ジロット氏がこだわったという室温で、ほどよいやわらかさとなったチョコレートの間に挟まれた、アクアカオの真髄のジュレに感動です。
固すぎず、柔らかすぎず、それでいてまさに「水」のように滑らかでつややかな舌触り。今までに経験したことのない「水(アクア)」が舌から脳に幸福感のある刺激を送ります。
四粒目:アクアカオ/No.4 コロンビア
最後の一粒を口に入れて、さきほどのベネズエラとの違いがよく分かりました。コーヒー豆の産地として知られるコロンビアのカカオは、ベネズエラに比べると、焙煎したかのような香ばしくてインパクトのある味です。そして、再び「水(アクア)」の食感。
「アクアカオ」は、カカオそのものの味が際だっているので、純粋に産地の味比べができます!
ここで再び会場から熱い質問が。
どのような飲み物と合うかという質問には、「水」という答え。ワインとショコラを合わせる人もいるが、ワインそのものに個性があるから、という理由です。また、コーヒーには、「アクアカオ」なら合うが、「クルール・ド・ブルゴーニュ」のフルーツの香りには合わない、と。とはいえ、水のみでショコラの個性を味わってほしいとのことです。
アクアカオのジュレの秘密については、最後まで明かしてくれませんでした(当然ですが、笑)。ただ、「海藻ではない何か」を使用しているとのこと。寒天は固まるけれど、後でとろけないから、と。
小さな一粒に込められた情熱、そしてその芸術作品のような繊細さを知ることができ、とても勉強になった1時間でした。
最後に、ジロット氏自らがスーツケース(チョコレート色だとか!)でフランスから運んでくださったというお土産が配られました。「アクアカオ」の4種類8個入りコフレです。もちろん、伊勢丹新宿店で入手できます。
帰りに6階に会場に立ち寄りましたが、ショーケースが見えないくらいの人だかり。会場の熱気にチョコレートが溶けや心配になるくらいです(笑)。
東京でのサロン・ディ・ショコラは2月1日までですので、ぜひ足をお運びください!
~パリ発、チョコレートの祭典~サロン・デュ・ショコラ
伊勢丹新宿店本館6階
Tel:03-3352-1111
ファブリス・ジロットHP(英語、フランス語)
2010年2月のサロン・デュ・ショコラ開催スケジュール
2/3~2/14 京都
2/3~2/15 名古屋
2/3~2/08 福岡岩田屋
2/5~2/14 札幌
2/5~2/14 仙台
たかせ藍沙
http://www.aisha.jp





