4585kojihu


中学2年生~高校2年生のころ、僕には罪悪感というものが欠けていた。

街中のいたるところに落書きをしてまわった。

最初のうちはメッセージらしきものを書いていたけど

そのうち、メッセージよりもマーキング的な意味合いが強くなって

ただスプレー缶を持って夜な夜な繰り出していた。

それを約4年間続けた。

そしてそれらを一部は、15年後の今になっても残っている。

どうしたものか思い、ある夜、僕は清掃道具を持って落書きの場所に向かいゴシゴシやってみた。

雨の日も風の日も15年間堪え忍んだ落書きは、そんなに簡単に消えることはなかった。

しかし、一心不乱に壁をこすり続けた。すると家人が出てきて、何者かと尋ねる。

僕はとっさに

「趣味で落書きを消して廻っているものです。決して怪しいものではありません。」

と言ってしまった。

「15年前にこの落書きをしてしまったものです。消させてください。」

と言わずに。

「結構です。お帰りください。」

家人はそう言うと、僕をじっと見た。

「すみません。」

僕はそう言うのが精一杯で、そのまま道具を片づけその場所をあとにした。

罪悪感を置いたまま。