中学2年生~高校2年生のころ、僕には罪悪感というものが欠けていた。
街中のいたるところに落書きをしてまわった。
最初のうちはメッセージらしきものを書いていたけど
そのうち、メッセージよりもマーキング的な意味合いが強くなって
ただスプレー缶を持って夜な夜な繰り出していた。
それを約4年間続けた。
そしてそれらを一部は、15年後の今になっても残っている。
どうしたものか思い、ある夜、僕は清掃道具を持って落書きの場所に向かいゴシゴシやってみた。
雨の日も風の日も15年間堪え忍んだ落書きは、そんなに簡単に消えることはなかった。
しかし、一心不乱に壁をこすり続けた。すると家人が出てきて、何者かと尋ねる。
僕はとっさに
「趣味で落書きを消して廻っているものです。決して怪しいものではありません。」
と言ってしまった。
「15年前にこの落書きをしてしまったものです。消させてください。」
と言わずに。
「結構です。お帰りください。」
家人はそう言うと、僕をじっと見た。
「すみません。」
僕はそう言うのが精一杯で、そのまま道具を片づけその場所をあとにした。
罪悪感を置いたまま。