あの人からの連絡が最近、途絶え気味だ。それまでは、3日に1度は連絡をくれていたのに、それがだんだんペースダウンしていき、10日前の連絡を最後に今日にいたっている。
蓮島の海は、春を迎えて少しだけ潮の香りを強くなった。わたしは、この移り変わりを今年ほど感じたことはない。生命の波動のようなものとシンクロしてしまう。海の向こうから渡ってくる香りに、ガクの匂いを感じるのだ。わたしの知らない、知ってはいけない土地からやってくるガクの匂い。
いちばん最後にあった連絡で、ガクはこう言っていた。
「俺たちは誰にも祝福されない運命なんだ。だけど、それもいいかもしれない。誰もいなくなってしまうかもしれないから。」
わたしは、この蓮島で生まれ、祖母と母親を相次いで亡くした。時々、この島にやってくる男たちは、わたしにとって海鳥たちのようなもので、何もわたしに与えてはくれなかった。ガクを除けば。つまり、誰もいなくなることは怖くない。だけど、誰もいなくなるとはどういうことなのだろう。
わたしもガクもいなくなるのだろうか。
本当は、そのことを聞きたかったのだけど、口に出そうとした瞬間に心がざわざわしてきて言い出せなかった。
これから、わたしとガクはどこに向かい、どこに辿り着くのだろう。
昨日から降り続く雨は、雲の切れ間の青空をそれがすべてであるかのように切り取っていた。