2年ごとに引っ越しを重ねて14年になる。
 毎回、3月に引っ越しをして新たな気持ちで4月を迎えることを常としている。今回の物件はちょっとおもしろい。

“格安物件 バス・トイレ別 広々ワンルーム 給湯あり 電気なし”

 電気が通っていないことを除けば、かなり良質な小型マンション。マンションのオーナーもここに住んでいるとのことで、彼のライフスタイルゆえの物件らしい。だけど、住んでみてその快適性を実感している。
 風呂などはガスがあれば問題ないし、なによりも電気がないことによってこのマンションはとても静かなのだ。夜になれば、大きめの窓を通して入ってくる街灯や月明かりくらいの照度で、とても暗い。人というものは、とても不思議なものでそんな部屋の中では、なぜかひそひそ話してしまう。
 そしていろいろなことをひそひそとじっくり話した後、それまでの就寝時間からはいささか早い時刻に寝て、次の日早く起きる。
 なんだか、ワンランクアップの生活をしているような気がしてくるから不思議だ。
 なんとなくではあるけど、2年後、そのまま住むことを考えているような気がする。