はじめてネクタイをしたのは、大学の入学式のとき。
 なんだか、くすぐったい気持ちで嬉しかったのを覚えている。
 現在、ネクタイをする必要のない仕事をしているので、ネクタイをするのは年に数度。友人の結婚式のときくらいのものか。ネクタイというのは、なにかのアイコンなんだろうな。マナー、倫理、社会性…。
 実は、最近、結婚式のときですらネクタイをしていくのが億劫になってきた。ネクタイをすることによって、大事なものを失うような気がするんだ。
「そんなちっぽけなことを…」
 そう思うだろう。10代のころは、ただやみくもに“自信”があった時期ってなかった?それも“根拠”のない強い“自信”。それがいつしか消えてなくなってしまい、イヤだイヤだと思いながら、毎日を過ごしている…そんなことってない?
 別にネクタイを外したからといって、あの頃の自信が呼び戻せるなんて思ってない。だけど、ネクタイくらい外したっていいじゃないかと思うだけ。そんなことで、判断される社会に住んでいるのが窮屈なんだ。