日曜日に行われた格闘技の試合、プライドのヒョードル対ミルコを今日見た。
当日は有料の衛星放送だったので見ることができなかった。
ネットのニュースも見ずに試合の結果を知ることなく、できるだけひっそりと今日を迎えた。
ヒョードルは全戦全勝のチャンピオンである。
ミルコは、最強の挑戦者といわれながら、何年も前から対戦を望み、今日の試合を実現するために何人もの相手を倒し続けてきた。

リング中央に二人が呼ばれ、レフリーが反則の注意をしている間、ヒョードルはうつむき気味に、ミルコは相手の顔にじっと視線を送っていた。
1Rは、最初からヒョードルがミルコに圧力をかけ、ミルコが回りながら圧力をかわす展開だった。
中盤に入り、ミルコのカウンターの左ストレートパンチがヒョードルの顔面をとらえ、ヒョードルは大量の鼻血を流した。
ふらついたヒョードルを倒しにミルコが前に出てパンチを打ち込み、決め技の左ハイキックも飛び出したが、ヒョードルを捕らえることはできなかった。
そのすぐ後、ヒョードルがミルコをマウントポジションに捕らえる。
こうなった時のヒョードルの圧力は凄まじく、これまで何人もの相手をKOに追い込んでいる。
ミルコはかつてK-1に出ていたこともあり、立ち技打撃系の選手で寝技を得意とはしていない。
格闘技全般に言って、立ち技と寝技の組み合わせでは、寝技が得意な選手が有利だ。
大体、打撃を得意とする選手を相手にするときは、倒してしまえば何もできなくなる。
しかし、今日のミルコはヒョードルのパンチを紙一重で避け続け、およそ4分以上も圧力に耐え続けた。
4分とは途方もなく長い時間だ。
ミルコに対し、上から振り下ろすヒョードルのパンチは風圧が聞こえてくるような代物だ。
ヒョードルの一回の攻撃の波をミルコが避けて、経過した時間を見ると、たった10秒しか時間がたっていない。
そのヒョードルの荒々しい暴力の波をミルコは4分の間すべて避け続けた。
1Rが終わった。
顔面が血まみれで、深いダメージを負ったように見えるのはヒョードルである。
ミルコはコーナーで静かに座っているが、ぐっと歯を食いしばる表情を見せる。
2Rが始まった。
明らかに両者の動きが鈍い。
これならミルコの左ハイキックも決まるのではないかと思った。
しかし、ミルコの動きは緩慢と言っていいほどで、手数も、早さも第1ラウンドとは明らかに違う。
ヒョードルは再びマウントポジションを取る。
しかし、1R同様ミルコは決定打を打たせない。
打撃の選手がヒョードルにここまで寝技を使わせないことに驚く。
しかし、圧力をかけ続けているのはヒョードルで、ミルコは立たなければ負けるであろう。
3Rはミルコはほとんどの時間をヒョードルに組み伏せられていた。
細かい打撃は返すが、効かない。
ヒョードルが上になった状態で試合終了のゴングが鳴り、ヒョードルは立ち上がり、寝ているミルコに手を差し伸べる。
ミルコはそれに従い立つものの、その後のヒョードルが見せた健闘を称えあうような仕草にも反応が鈍い。
判定の発表で、まずヒョードルがコールされると、ミルコは歯を食いしばるような表情を見せる。
判定の結果によって、ヒョードルが勝利をおさめた。
ヒョードルがミルコに近付き、二人は軽く抱き合うような仕草をしたが、ミルコは体を一瞬合わせただけですり抜けた。
ヒョードルは奥さんをリングに上げ軽く抱き合う。
チャンピオンはチャンピオンのままだった。
ミルコはコーナーで俯いて、頭に水をかけられながら歯を食いしばるような表情を見せる。
ヒョードルは左目の上をかなり腫らしていたが、チャンピオンベルトを巻き両手を挙げて、観客の歓声を受けている。
ミルコはしっかりした足取りで、後も振り返らずにリングサイドを戻っていく。
花道を戻る時に一瞬だけ歯を食いしばるような仕草をする。