旧式的な三発エンジンにハイテク機を思わせる端整なウィングレット。
この絶妙なバランスと美しさで数多くのマニアを虜にしてきたMD-11ですが、定期旅客便から姿を消して10年が経過しようとしています。

私がヒコーキ心ついた頃はかろうじてフィンエアが関空-ヘルシンキ線に投入していましたが、JALからはすでに姿を消していました。

しかしJALが導入してくれていたおかげでハセガワから1/200のキットがリリースされ、さらにありがたいことに海外エアライン仕様もリリースされたことで、PW,GE両仕様のエンジンを手に入れることができました。

 

今回はそんな海外エアライン仕様、フィンエア版のキットを使用して、旅客型MD-11の最後を飾ったKLMの機体を仕上げていきたいと思います。

 

 

デカールは数年前にDraw Decalから直接購入したものを使用。退役時の特別塗装を再現しています。

 

 

キットは777と同世代で繊細な凹モールド。...なのですが、胴体のモールドには致命的な欠陥が...

 

 

こちらはエンジンパーツ。フィンエア版なのでエンジンはGEです。JAL版はPWですが、GEが欲しいとなるとあとはアメリカン、KLM、ガルーダ、VASPあたりでしょうか。
一部DC-10との共通パーツもあるようです。

 

 

さて少し触れましたがこのキットの弱点の一つが胴体のモールドが左右でズレているところ。写真では見にくいかもしれませんが、胴体中央部あたりです。
埋める派からすればさしたる問題ではありませんが、モールド活かす派からすれば由々しき事態です。

 

機首の造形は割と良いと思いますが、コクピットウインドウの横あたりが平面になっているのは気になります。修正される方も多いですが、今回はこのままにしておきます。

 

 

胴体内側に重り固定用の溝がある部分はどうしてもヒケが出来てしまうのでポリパテで埋めておきます。コクピットウィンドウは今回デカールで再現するので、透明化のことは気にせずガッツリ盛っていきます。
 

 

この世代は凸モールドから凹モールドに進化してはいるものの、パーツ割はまだ前時代的でエンジンカウル内の隙間が目立ってしまいます。最近はファンより前の部分が一体になっており合わせ目消しが不要になっているものが増えました。塗装してから組み立てるという選択肢が出てくるので良いですね。

 

 

No.2エンジンは胴体と別パーツになっていますが、ここで一旦フィットチェック。

左右の胴体で平面が出ていれば大丈夫ですが、段差があると当然片側が担いでしまい隙間ができるか尾翼が傾いてしまうので注意が必要です。そうならないよう接着前の段階で調整しておきます。


 

エンジン内部の合わせ目消しが完了。No.1,3エンジンのエアインテイク、ファン部分は組んでから塗装しますが、No.2エンジンはファンまでの距離が長く組んでから塗るのは大変なので、あらかじめ内部を塗装してから左右を貼り合わせています。そのため内部入り口付近のみマスキングしています。

 

 

胴体の方はモールドを修正しました。労力に見合っているかはわかりませんが、気持ちの問題ではあります。

 

 

大方の処理が終われば垂直尾翼を取付け。No.2エンジンが良い。実に良いです。

 

 

このまま串刺しにして塗装するとラクなのですが、今回は主翼を先に接着してしまうのでランディングギアを付けて自立させます。

 



微妙に内股になってしまいました...

 

 

胴体と主翼の間には隙間ができたのでポリパテで埋めておきます。主翼を先に取り付けたのはつなぎ目を消したいから、というのもありますが、主翼前縁付近のフェアリングの形状がおかしかったので修正したかったという方が大きいです。

 

 

下地処理が終わりました。やはりサフを吹いた状態で見ると、コクピットウインドウからL1/R1ドアにかけての謎の平面が気になりますね。

 


白はGX1クールホワイトを使用。最終的に白くなる部分は胴体下側と垂直尾翼ですが、青の発色が良くなるように全面を白で塗っています。テープに塗膜が持っていかれないよう、1週間程度乾燥させてからマスキングします。(単に週末にしか塗装できる時間がないだけですが...)

 

 

KLMを作るうえで最も重要なのがブルーをどう再現するかです。
あまり複雑なレシピにはしたくないので、今回はクレオスの色ノ源CR1シアンとGX1クールホワイトの2色のみを使用しました。クリアーの空瓶を調色用とし、CR1をある程度入れたあと少しずつGX1を加えて瓶内の色味を確認。大切なのは面倒でも一度白のプラ板に塗装して、乾燥後に色味を再確認することだと思います。必要に応じてさらに白を加えたりします。
調色の苦手さには自負のある私ですが、色ノ源をベースにしたおかげで純度の高い青をなんとか表現できたようです。

 

 

濃いブルーのストライプはデカールで用意されているので胴体の塗装はここまで。


 

ウイングレットが白いことを忘れていたので、エンジンカウルを塗ったタイミングでこちらも塗っておきます。

 

 

エンジンパーツのマスキング。インテイク内を塗り分けるのは1/200だとややオーバースケール感はありますが、雰囲気が重要なので一応塗り分けておきます。

 

 

主翼はニュートラルグレーⅡを塗ったあとコロガード用のマスキングをします。

黒いのはハセガワの0.5mmマスキングテープ。基本細切りのマスキングは自分で切って作るようにしていますが、この長さを一定の太さに保つ自信がなかったので既製品を使用しました。粘着力は通常のマスキングテープより弱いので注意が必要です。

 

 

前縁のシルバーまで塗装すれば...

 

 

塗装完了!

 

 

エンジンも仕上がりました。なおナセルの方は今回は最後に接着するようにしているため、別で塗装しています。

 

 

さて今回のように濃い色の上からデカールを貼るパターン、過去に何度もシルバリングを起こして失敗しているので、きちんとクリアーを塗って4000番で研ぎ出ししました。全面をやる必要はなく、あくまでデカールを貼る部分のみです。

 

 

いよいよデカール貼りです。

 

 

研ぎ出しした甲斐あってか、シルバリングを起こすことなく貼ることができました。
今度からちゃんとこうしよう....

 

 

デカールを貼り終えたらクリアー塗装。

塗装スタンドを自作して胴体、翼を同時に塗れるようにしました。ただし、裏面はこれでも塗りにくい部分はあるので、最後の段階でスタンドから外して裏面を集中的に塗ることにしました。

 

 

個人的に初の試みとしてウェザリングを実施。客窓の下の水垢を薄めたエナメルのブラックで再現します。

 

 

少々やり過ぎた感もあり、ラストフライトというよりかどちらかと言えばビクタービルの砂漠で眠っている機体みたいになってしまいましたが、まぁこれはこれでアリとします。

 

 

尾翼の汚れはタミヤのウェザリングマスターにて失礼。

 

 

エンジンの方はリバーサーが作動した時の排気が当たるイメージで、モールドを基準に後ろ側のみ汚れを付けておきました。

 

 

実機写真を参考にしながら、フラップ、スポイラー部分を汚します。特に何も考えずモールドに対して直角方向に汚しを入れてしまいましたが、これは進行方向に対して汚れを入れるべきでした。ウェザリングにあたっては、なぜここがこう汚れるのか?、その原理を理解することが大切だと思いました。

 

 

汚しも済んだら後は各部品の取り付け。そういえばハセガワMD-11はランディングギアのホイールのはめ込みが内側のみ異様に硬いのを思い出しました。組みやすさには全幅の信頼を寄せているハセガワキットですが、たまにこういうことがあるので油断はできないです。

 

 

さて今回はKLMブルーを自然光で撮りたい!ということでこんなものをご用意。
天気の良い日を見計らってロールアウトです。








MD-11。やはりこのシルエットは堪りません。

KLMのイレブンはとうとう撮影すること能わずでしたが、プラモでも自然光で撮ればそんな悔しさも吹き飛ぶくらいの満足感を得られたのではないかと思います。

 

レア機や好きな機体を撮り逃しても、自分の手で作ってしまえば思う存分撮影できますし、まぁ撮れなかったらプラモで作ればいいや、と心に余裕が持てるので、ヒコーキ写真の趣味を続けるにあたっても精神衛生上よろしいものだと思っています。

 

こんな感じで、今後は完成機体を屋外でも撮影していきたいなと。

ただし風には要注意。

 

この後起きた悲劇とその後の展示会はまた別のお話です。