2023年はハセガワから767-200が旅客機として久々の再販(KC-46Aとしては近年もリリースされていました)、ANAの767が就航40周年を迎えたことからウィングレット付き767-300も限定版でリリースされるなど、767が熱い1年でした。

 

再販された767-200はデモンストレイター、つまり初号機なわけですが、では最後の機体は?というと実は貨物型と軍用型(タンカー)は現在も生産が続けられています。(旅客型767は事実上生産終了済み)

 

デモンストレイターの方はもちろん製作するとして、767は今も生産されているんだよ、ということをテーマに-300Fも同時に作ろうと思い至りました。

 

 

-300Fは製作途中のラウダ航空版を使用します。実は以前これで767-300のデモンストレイターを作ろうと思っていたため、各部品の合わせ目消しはある程度完了していました。-300初号機のエンジンはJT9DなのでPWエンジン付きのキットに手を付けていたというわけです。

しかし生産中の-300FのカスタマーであるFedexとUPSはいずれもCF6を選定しているため、積んでいるANAのキットからGEエンジンを流用することに。

 

ちなみに-200の方は後年再リリースされたもののため凹モールドとなっていますが、-300の方は凸モールドです。初版-200も凸モールドでしたが、金型改修で-300にしてしまい-200は作れなくなってしまった、というのは界隈では結構有名な話ですね。

 

 

さて、お手つき-300は以前全て凹モールドに掘り直していました。今回は貨物型となるのでまずはモールドの彫り直しから。-300Fの特長であるMDCD(Main Deck Cargo Door)をまずは通常のマスキングテープで位置決めします。その上からスジ彫り用のガイドテープを貼ってケガいていきます。マスキングテープを最初に貼ったのは慎重に位置決めするため。スジ彫り用のテープは貼り直しに弱いため、ああでもないこうでもないと貼り直していると、すぐに剥がれやすくなってしまいます。

 

 

胴体パネルのモールドはハセガワのラインエングレーバーの細彫り用を使いましたが、貨物ドアは同太彫り用を使用しました。ドア類はモールドを埋めてデカール表現にしてしまっても良いのですが、塗装段階で塗り分けをするため目印を残したい、という意図もあったためスジ彫りを選択しました。

 

 

細かい話ですが、貨物型は旅客型とドア以外にもパネルラインが異なる箇所があるのでそこも同じ手法で彫っておきます。

 

 

旅客型→貨物型により不要になったモールド、パテがヒケていた窓部分にポリパテを盛って消していきます。写真はありませんが、右舷側も-300Fは前後LCD(Large Cargo Door)タイプなので修正しています。

 

 

同時製作中の-200デモンストレイターとともに。こちらは素組みなのでペースが速いです。-300Fの方もどう塗るか具体的に考えていかなければなりません。

 

 

今回再現しようと考えているのはBoeingの工場で組立が完了し、全体塗装に入る直前の状態の機体。例えば「767 assembly」なんかで検索すると金属肌に緑色をした767が出てくると思います。自分も昔は飛行機って緑色をした特殊な金属を使っているんだな、と思っていましたが、あれは製造中の機体表面を腐食などから保護する塗料の色のようです。となれば、金属を表現したシルバーの塗装の上からクリアーカラーを塗る表現が正攻法。いわゆるキャンディ塗装というやつです。メタルグリーンも色合いは悪くないのですが、色合いの調整はクリアーカラーの方が融通が利くかなと思ったのも理由の一つです。

 

 

胴体は下地として白を塗った後、レドームや翼胴フェアリング部分をグレーで塗装。続いてグレーの部分をマスキングしますが、境界部分は細切りのマスキングテープを使用。内部はマスキングゾルでマスキングしておきました。

 

 

続いて下地として黒を塗装。パネルラインに沿って塗るという軍用機等でよく見る手法をマネしてみたのですが、果たして上手くいくかどうか...

旅客機以外のプラモデルにも色々手を出してみたいと思ってはいるものの、製作時間が取れないため井の中の蛙状態です...

 

 

一つ前の写真と変わっていないように見えますが、垂直尾翼を塗装しています。こちらも製造中の機体の写真を参考にしています。同じ色をエンジンと水平尾翼にも塗っておきました。

 

 

胴体全体をシルバー塗装。ガイアノーツのExシルバーを使用しました。試し塗りした感じでは、GXアイスシルバーの方が色合い的には良さげだったのですが、少し粒子が大きすぎる感じがしたのでこちらを選択。写真ではややわかりにくいですが、ちゃんと下地の白黒で濃淡が出ていて良い感じ。

 

 

翼の方も接着・整形・凹彫り直しは基本終わっていた状態で放置していたので塗装から再開。コロガードのマスキングは楽、と思いきや、境界は一直線ではなく一部出っ張っているところがあるので以外に面倒だったりします。

 

 

前縁も通常ならシルバーですが、ここも保護色が塗られているようなので、調色したクリアーグリーンを塗装。結局、クレオスのクリアカラーGX122クリアピーコックグリーンをベースに、同104クリアグリーンを混ぜていきました。プラ板で何度も試行錯誤した結果ですが、やはりいきなり胴体にドバッと塗るのは怖かったため、面積の小さい翼で試し塗りしてみた、という感じです。

見た感じ案外悪くなさそうです。

 

 

というわけでいよいよ胴体に塗装開始。ご存じの通り767は日本の重工メーカーが胴体パネルを分担製造していますが、そのメーカー毎に保護塗料の色合いが異なっています。今回再現したいのはズバリその点で、マスキングしつつクリアカラーを塗り重ねる量を変えながら塗り分けていきます。特にKHIの担当パネルはSpiritに比べるとかなり色が薄いので、メリハリが付いて模型映えします。

 

※KHI = 川崎重工業

※Spirit = Spirit aerosystems

 

 

後部MHI担当パネルも塗装して一通り完了。主翼に加えエンジンと水平尾翼も塗り分けが完了しました。ここで完了として組んでしまっても良いかもしれませんが、ここまで来たのならもう少し手を加えてみます。

 

※MHI = 三菱重工業

 

 

手を加えていく(追加で塗装する)のは主にラダー、貨物ドア、水平尾翼の付け根あたりです。

 

 

面倒ですがもう一度マスキングしていきます。最初から計算して塗り分けていけばもっと速く進んだと思いますが、そもそも胴体の塗装が上手くいくか半信半疑だったため、まずは大まかな塗装が終わった時点でマスキングを剥がして出来を確認したかった、という意図で工程を分けています。

 

 

実機写真を見るとラダーは組立時には一部塗装済みとなっています。そこを再現するとなると自ずとどこのエアラインにするかを決める必要がありますが、今回はFedex向けの機体を再現することにしました。手持ちのMD-11用デカールのサイズがなんとなく合いそうだったため、まずはロゴをトレース。

 

 

マスキングテープの上に重ねてカットします。ここはフリーハンドの切り出しとなるため精度はイマイチですが、一部を塗装するだけなのでまぁいいかなと。

 

 

さきほど切り出したマスキングテープの位置決めは、ロゴを切り出す時に利用したトレーシングペーパーを利用します。ロゴ全体をトレースしたのはこのように尾翼での位置決めをするため。767用デカールではありませんでしたが、結構良いサイズ感でした。

 

 

境界線をぼやけさせるため、コピー用紙を使用し少し浮かせるようにマスキング。これも軍用機の迷彩塗装のテクニックを見よう見まねでやってみた感じです。紫のカラーは市販の良い感じのものが見つからなかったため、色ノ源シアンとマゼンタを混ぜて作っています。隠蔽力は全くないので下地は白およびニュートラルグレー1で塗っておきました。

 

 

なかなか良い感じになりました。...が、予想以上にマスク漏れというかコピー用紙の下部分まで塗料が飛散していたので、飛んで欲しくないところは通常通りマスキングしておき、境界部だけこの手法を使うのが良いのかなと思いました。吹き方が悪いだけなのかもしれませんが...

貨物ドアの方も塗り分けをしていきます。

 

 

これで一通り塗り分けが完了しました。今回ドア類のデカールは使用していませんが、スジ彫りと塗り分けを行うことでそこがドアであることをなんとか表現できたのではないかと思います。

 

 

コクピットウィンドウはデカールにて。カーゴドアのヒンジ部はハセガワのホワイトフィニッシュを使用。ややオーバースケール感がありますが、この塗装状態の実機写真を見るとそこそこ目立つのでアリかなと思って進めました。後は研ぎ出しに向けてクリア塗装を行います。

 

 

クリアが乾燥したら#4000のスポンジヤスリで磨いていきます。上の写真は機首からフェアリング部あたりまで磨いた状態ですが、少し白っぽくなっているのが分かると思います。いつものように高番手まで磨いていくより、この方が金属感が出ると思ったので#4000で磨いた状態で完了としました。ただし、実機写真のツヤの具合等を見てMHIパネルのみ#8000まで磨いています。

 

 

翼、エンジン類も磨いていきます。コロガードは本来はつや消し/半ツヤ程度が正しいのだと思いますが、クリア吹きっぱなしのザラザラした感じはちょっと違うかなと思うので(このあたりは個人の好みの問題です)、こちらも#4000で磨いたところでストップ。一方でコロガード以外はいつも通り#10000まで磨いてツヤを出しておきます。こうすることでザラつき感を抑えつつ、ツヤ感のコントロールも出来たかなと思います。

 

 

研ぎ出しが終わればパーツ取付け。説明書の取付順序とは異なりますが、こうすることで

 

 

主翼接着時の上反角が維持しやすくなります。

 

今更ですが、胴体と主翼は先に接着・合わせ目消しをしてから塗装した方が確実に仕上がり具合は良くなります。今回は塗装時の作業性を優先したので最後に接着する手法を選びましたが、やはりつなぎ目部分が目立ってしまいました。しかし某海外製キットのように数ミリ隙間が空くわけではないので、許容範囲だと思って妥協しました。

 

後はアンテナ類はプラ板から切り出し、取り付けて完成です。

 

 

少し色が濃すぎたというか、もう少しエメラルドグリーンっぽくすればよかったなと反省点はありますが、全体的な雰囲気としては及第点かと思います。

マニアック過ぎて需要がないためか、この仕様の完成品モデルはあまり見かけませんが、プラモデルではこんな仕様も自由に作ることができるわけです。

 

さて、製造開始から40年以上が経過している767。ICAO環境規制により、2028年以降は製造ができなくなる(民間型のみ、軍用型のタンカーは例外)とされていますが、現時点で後継機種開発の目処が立っていないため、特例による規制対象除外やエンジン変更も噂されています。

 

果たして、2030年代もこのような製造中の姿を見ることができるのか。そんなことについ思いを馳せてしまいました。