Wasted Kisses | bien dans sa peau

Wasted Kisses




盛りのついた野良猫の鳴き声が

奇妙に響き渡る。



月夜の路地裏で

煙草を燻らす女の深紅の唇を見た時、

『本能』が発した危険信号を

『理性』で打ち砕いた。



その頃

酒でも酔えずに

醒めていくばかりの俺は、

違う方法で堕ちるしかなかった。


上を向くには、前を見るには、

まだ辛すぎたのだ。




悪魔を抱き寄せキスをした。


煙草の匂いと、安物の香水の匂いと、

入り混じって、快感なんてありゃしない。


でも、もう、どうでもよかった。




俺が喪った、

たったひとつの愛する命。



取り戻せるものなら

死に物狂いでなんでもするが、

その術がないなら、

いくら神と言えども、

今は、放っておいてくれ。



堕ちるだけ堕ちて、底を見たら、

今度はあんたにキスしに行くよ。








💜朗読