Wasted Kisses
盛りのついた野良猫の鳴き声が
奇妙に響き渡る。
煙草を燻らす女の深紅の唇を見た時、
『本能』が発した危険信号を
『理性』で打ち砕いた。
その頃
酒でも酔えずに
醒めていくばかりの俺は、
違う方法で堕ちるしかなかった。
上を向くには、前を見るには、
まだ辛すぎたのだ。
悪魔を抱き寄せキスをした。
煙草の匂いと、安物の香水の匂いと、
入り混じって、快感なんてありゃしない。
でも、もう、どうでもよかった。
俺が喪った、
たったひとつの愛する命。
取り戻せるものなら
死に物狂いでなんでもするが、
その術がないなら、
いくら神と言えども、
今は、放っておいてくれ。
堕ちるだけ堕ちて、底を見たら、
今度はあんたにキスしに行くよ。
💜朗読