このピアニストはもしかして魔術師か?と思った。
 
「2台ピアノが奏でるバレエの世界」

@東京芸術大学奏楽堂
12名の東京芸術大ピアノ科の教師がそれぞれ2台のピアノでバレエ曲のみを演奏したコンサートに行ってきた。プログラム(↓)

バレエは子供のころから好きだったし、管弦楽のバレエ曲は聴いてきたが、2台ピアノのバレエ曲を聴くのは初めて。
だからこのプログラムを知った時は嬉しくて飛びついた。

いつもならコンサートに行ってくると
特にこの曲のこんなところに感動した
というような子供の読書感想文みたいなことをやらかしてしまうのだが
今回はそれができない・・
素晴らしい演奏に最後まで圧倒されっぱなしだった。

最初の「くるみ割り人形」はとても有名だし、私もその昔踊ったことがあるのでww ちょっと余裕だった。
何十年も前の振り付け、しかも憧れの先輩のパートも覚えてる。
花のワルツでは踊りたくなってしまった。

実際1stの梅田智也先生は左足を後ろに蹴り上げて今にも踊りだしそうに見えた。

それから、次から次へと息を吞む演奏が続いていたのだが
最後の「火の鳥」でとどめを刺された。

内部奏法などのピアノの性能をフルに使って太鼓の音や弦のハーモニクス・グリッサンドを再現したり、とてもパワフルだったり超繊細なタッチだったり・・
という高度な演奏のことだけではない。

何か突き抜けている演奏だった。

魔法をかけられたピアノが踊っているみたいな
この世のものとは思えない不思議な感覚。

演奏者のみなさんは最後まで一言もお話されなかったが、演奏直後のお顔が「楽しかった!面白かった!」とおっしゃているようで、その弾けた笑顔が印象的だった。

今までもジーンと感動したり、心が揺さぶられたりすることはある。
今回はそれとはちょっと違った、何かを心に刻まれたような演奏だった。
 

うまく言葉で表現できなくてもどかしさを感じる。

でも実際に生演奏を聞かないと伝わらないものかもしれない。

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この日はもう頭も気持ちも満たされたのか何も視聴する気が起こらず、観たいと思っていた動画は翌日にゆっくり観ることにした。


いつも楽しく読ませていただいているプロガーさんがお薦めされていた動画である。

厳選クラシックちゃんねる「ピアニスト小曾根真が語るクラシックの魅力」


小曾根真さんは、ジャズからクラシックを始められた方なので是非お話を聴いてみたいと思っていた。

とても見応えのある動画で視聴して良かった!

演奏の楽しみ方に関してアーティストと観客の関係についてのお話も良かった。
そして前日の演奏会で特別な経験をした直後だったので、おこがましいようだけど
特にアーティスト活動に対する考え方に共感した。

「アーティストは人から時間とお金をいただいて

 曲を書いて演奏して皆さんに戻していく

 というサイクルが大事なんだけど
 平易な音楽を提示して

 これならわかりますか
 というのは違う。

 これは上から目線になっていて
 とにかく一生懸命やってそれを皆さんに

 さらけだすのがアーティストなんだ」
 

観客に寄せてわかりやすいものを提示して喜ばせるのではなく
やりたいことを一生懸命やって演奏すれば、それが人々に伝わって心を動かすということだろう。

そして
「40過ぎから自分のスタイルを

 感じられるようになった。

 今ワクワクするものが欲しい

 っていうのが一番」

ともおっしゃっていた。


とても素敵な生き方だ。