まえがき

今日から、ときどき、きままなエッセイを書きたいと思います。

みなさんは、客室乗務員が、ふだん、どんな生活をしているのか

興味をもたれたことはありませんか?

正直、今でも、スッチーという職業は、仕事に、恋愛に、結婚に、プラスをもたらしてくれること

あります。「も」です。助詞が重要なのです。

みなさんは、「も」の世界が、スッチーの私生活のすべてと、思っていらっしゃるようです。

だけど、すっちーも、普通の20代、30代、40代、50代を過ごしています。

いえ、ふつうの年代より、過酷かもしれません。

わたしは、日系、外資と、乗務してきました。たくさんの、愛すべきスチ友

との出会いがありました。みんな、一生懸命だけど、どこか笑ってしまうような、魅力的な、

素敵な女性たちでした。

きっと、みなさんと似た女性もいるはず。そんな、すてきな、自分の人生に一生懸命な15人の

スッチーが登場します!主人公、あづさの語りで、エッセイはスタート!

このエッセイは、事実に基づく、フィクションです。

響子 その1


私が始めて、響子に出会ったのは、東洋航空の入社式。


久木田という、珍しい苗字と、社員番号が近かったことから、はじめて名前を覚えた、


友達だった。すらりとし長身に、秋田出身らしい、きめこまやかな肌をまとった、


小さな顔が、ちょこんと、乗っかっていた。


人間に、動と静のタイプがあるならば、響子は、どこから見ても、静の空気をまとっている。


響子は、東洋航空に入った目的は、たったひとつ。


いい、男をつかむこと。

実際に、そんな風に思っているCAは多いかもしれない。

しかし、空を仕事場に選ぶ女性が、男性探しに夢中になることは、意外にむずかしい。その男性は、

空の魅力を越える存在でなければ、ならないからだ。

しかし、響子は違っていた。

おとなしそうな外見とは、うらはらに、


「わたしは、お見合いをして、1年以内に、ここを退職するの、だから、東洋にこだわったんじゃない」


そんな、響子のことばに、おどろかされた。


「でもさ、実家に帰って、だれかに紹介してもらうのって、なんだか面倒じゃない?」


世間を知らないわたしに、響子は、上品なほほえみをたたえながら、答えた。


「お見合いクラブに、入ってるの。いいわよ、いい男しかいないんだから。あづさも、すぐに登録できるわよ。

東洋航空のCAって言えば、即・審査OKなんだから。週末にパーティがあるのよ、来ない?よかったら」


「パーティ?二人で会うんじゃないの?お見合いって。それに、わたしたち、まだ、訓練生だし」


「今はね、たくさんの人と出会って、その中から、相手を選ぶのよ。訓練生なんて、


一番の、ブランドなんだから、来てる人はね、ドクターか弁護士が多いかな、みんな、CAをねらってるんだから」


わたしは、圧倒されてしまった。


彼女の、楚々としたイメージとは、到底結びつかない、言葉の数々が、小さく引き締まったくちびるから、


次々と、流れ出る。


そういえば、彼女の眉間には、細い縦じわがあることに、わたしは、きづいた。


静かな、闘志をたたえる、面立ち。



普段の訓練では決して見せない、響子の姿が、わたしには不愉快に思えた。

わたしは、彼女の、眉間のしわの由来をどうしても、知りたくなった。

「ねえ、わたしも、パーティに連れてってくれない?」

つづく

☆時事問題(プロフィール欄)解答☆

ソルベンシーマージン比率