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もう原隊に復帰して勤務しているんだが帰りの途上に少し嬉しい出来事があった。

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ブダペストから出るミュンヘン乗り継ぎの便に遅れが出てミュンヘンの乗り継ぎが成り立たなくなってしまった、もちろんルフトハンザが面倒を見てくれるから何の問題も無いんだがやっぱり私の様に休暇明けの仕事始めに最低一日の余裕を持っている人ばかりではない。

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それでもみんなそれぞれの職場なり家族なりに連絡を取った上でルフトハンザの保証、代替え便にホテル、そこまでのタクシー券をいただくんだが私の脇にいたフランス人夫妻がかなり興奮して、というか動揺していた。

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特に旦那さんが怒りと状況が掴めず困惑している様で、対するまるで魔女の様な白い肌と真っ赤な赤毛のコントラストが強烈な奥様の方はかなり落ち着いて、

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「　何とかなるから落ち着きなさいよ　」

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と旦那さんより更に小柄に関わらず堂々としている、どうやらイタリア系の様でルフトハンザの勤務員にフランス語とイタリア語でクレームと状況説明を求めていたがドイツ人は大抵母国語と英語しか話さない。

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そう、意外にフランス人は英語を話さない。

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海を隔てたライバルの隣国が近代に世界覇権を握り今も自国を上回る影響力を持つという事を認めたくはないから話せるのに話さないのだと死んだ母は留学経験からそう言っていたのは覚えている。

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確かにそういう人もいる、だが私が感じるのはそのテの人は少数でやっぱり怠け心だと…

いや、喰わせてもらっている以上は、何よりフランスで軍人である以上はイギリスから祖国を護り切って裏切り者達に焼き殺されたジャンヌ・ダルクの様な人達の存在を想えばこそ良い意味での意地、郷土心と汲んで差し上げるべきだろうな。

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日本人でハングル語を習おうとする人がそこまで多くないというのと事情が違うところは英語は今やというか戦後一貫して世界公用語である事。

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何がともあれ私は今フランス兵、軍人警官一般とは自分が例え外地では旅行者の一人にしか過ぎなくても途方に暮れる自国民を外地に置き去りには決してしない人種、全て当たり前の事だ。

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よし、せっかく受けてきた訓練、彼らをお客さんとしてマルセイユに帰るまで依頼人扱いさせて頂こう

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そういう訳で英会話のカウンターでの折衝で貰った航空券にタクシー/食事付きホテル券をいただきタクシー乗り場へ、出入り口の安全化からタクシー搭乗から発進にホテルのチェックイン/アウト、空港の機内搭乗まで全て依頼人としてエスコートしてみた。

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幸い何事もなくかなりスムーズで翌日のマルセイユまでお送りできた。

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ミュンヘンのホテルを発つ早朝、タクシーを外の車寄せで待つ私に旦那さんが寄ってきた。

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「　外人兵はみんなこうなのかい？大したもんだ、うーっ寒いなあ、僕にはサムライは無理だな　」

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と言ってくれた。

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依頼金（　依頼などされてはいないが　）は私が外人部隊に入った2012年からの11年分の給料に各種手当て、もちろん病気になった時に払ってくれた治療費も入っている、私としては何の憂いも不満もないどころか勤めの一部が果たせて誇らしくすらあった。

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マルセイユ空港でお別れして密かに意気揚々の私、空港からのタクシーで飛地の要塞に手荷物を置いた後先日のアルジェリアおばちゃんとの約束を果たしにおじさん一家のおかきを持ってまた出かけた訳だ。

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自分をより良く変えたいと思ったら先ずは心に従った行動、これは間違いない。

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アルジェリアおばちゃんグループは残念ながら国に帰っていると常設テーブル脇の家庭菜園で作業中のおじいさんから聴いた、たまにグループのお友達がお茶を飲んでいるから伝えてくれるという、念の為に私のおじいさんとのツーショットを撮って見せてもらうことになった。

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「　彼女の旦那が隣の菜園を仕切っているんだ、伝えておくから来週またおいで　」

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かなり疲れたのは確かだが自らの心に従った行動の疲労はとても心地が良かった。

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『 訓練成果 』

『　訓練成果　』