そしてまたある日。
懲りずに雅春と買い物にやってきた。
少なくとも前回・前々回来たときには体調を崩していることはしっかり記憶にある。
それでも偶然が2回続いただけ、ただそれだけのことと考えていた。
店内に足を踏み入れる。
なんともない。
少し胸をなでおろす自分に気づき、驚く。
なにもあるわけがないのに。過敏に反応しすぎやろ。
自分自身にツッコミを入れる。

だが、予想通りなのか、予想に反してなのか。
買い物途中で、前回同様、やはり呼吸が苦しくなる。
なぜ?
あたりを見渡す。
やはり私だけ。
大きく息を吸う。吐く。
もう一度繰り返す。
もう一度、さらにもう一度。
しかし、どれだけ空気を吸い込もうとしても、酸素が極端に薄い気がしてならない。
どんどん体は重くなっていくし、思考回路も停止寸前。
なんとか目を開けて、フラつきながらも歩くのが精一杯。
でも、この感覚、どこかで知っている気がする。
そう、あのときもこんなだった。



取り巻くのは真っ赤な炎。
木造の建物は見るも無残に、いとも簡単に崩れていく。
空気を吸い込みたいのに、吸い込んでいるはずなのに、吸っても吸っても息ができない。
火の粉とすすがあたりにに充満し、目があけられない。



ふいにそんなビジョンが頭をよぎった。
しかし、これまで火事に巻き込まれたことなどない。
それで、さすがになんとなくわかった気がした。
私には、この土地にいい思い出はないようだ。

最後はワゴンにもたれるようにして店をあとにした。
以来、今日までこの店には訪れていない。
そしてこれから先も、決してないだろう。