地元に戻ってきた私は、それまでの会えなかった時間を取り戻すかのように雅春と一緒に
いることが多かった。
週末はもちろんのこと、平日も仕事のあとに会うというのも珍しくはなかった。
仕事も充実していたし、幸せな日々だった。
雅春が灰色に見えたこともあのとき限りで、それ以来普通ではない何かが起こるということも
なく、毎日が過ぎていき、その不思議な体験の記憶もうっすらとしたものになってきていた。

そんなある日、私は家族と一緒に買い物に出た。
行き先は某複合商業施設。
スーパーやレストラン、洋服や雑貨などの専門店が入っていて便利だ。
うちの周りには、「車で少し」という範囲にこういった施設がいくつかあるが、何故かここはあまりこない。
その日はおそらく2、3回目で、前回来たのはかなり昔のような気がする。
スーパーでワゴンを押しながら、違和感を覚えた。
人混みで酔ったのだろうか、なんとなく体が重い。
ひととおりスーパー内をまわってレジに並ぶ頃には、話すのもしんどくなってきていた。
母が私の様子がおかしいことに気づいたが、あとは会計を済ませるだけだったし、余計な
心配もあまりかけたくなかったため、少し疲れたのかもと言う程度に留めた。

父の運転で施設をあとにした。
しばらくすると、症状は少し軽くなった。
疲れが溜まっていたところに人混みに揉まれたせいだろう。
今日は家にいればよかった。
目を瞑り、そんなことを思いながら車に揺られていた。