それまでの私は、目に見えないものの存在やその力なんて、一切信じていなかった。
昔はスピリチュアルなんて言葉はなく、そんな話をちょっとでもしようものなら、たちまち
「怪しい人」の仲間入りだった。

私の母はたまに体調を崩すことがあった。
熱が出るわけでもない。咳こんだりするわけでもない。
ただ、体が重くて仕方がない様子でずっと寝込んでいる。
時にはひどい頭痛も訴えた。

「またよくないモノがついてきてしまったみたいやから、取ってもらってくるわ」

フラフラな状態でどこかへ出かけていく母を見送り、我が母のことながら
うすら寒いものを覚えた。
実際に見えないのに、何もあるわけがない。
究極のネガティブ思考が生みだした妄想。
本気でそう思っていた。

しかし、そんな私の目の前にいる雅春は、明らかに普通の見え方ではない。