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日本を元気にする電子ビジネスマガジン『夢列伝』 ブログ

【夢を持つすべての人々へ】
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『夢列伝』は志に気付き、生き方をつくり、
そして日本を元気にする雑誌です。

ビジネスや生き方のヒントになる記事を毎週 金曜日 更新中です。

「絶対に来ちゃあいけない!」

 

猛反対する母の言葉を押し切って、鈴木豊さんが父の会社、一斗缶の製造をしていたスズキ機工に入社したのは今から21年前の1997年、28歳の時でした。

 

――父の会社の経営が楽ではないのは分かっている。だが、前職の食品商社時代に培った営業力には自信がある。なんといっても、愚痴一つなく、油にまみれて毎日朝早くから夜遅くまで働く父親の姿は幼いころの脳裏に焼き付いている。その父の頼みは断れない――。

 

そう考えた鈴木さんですが、入社して改めて、現実の厳しさを思い知ることになります。バブル崩壊によって始まった際限のない価格競争の真っただ中にある一斗缶業界。そこに売上の大半を依存していたスズキ機工は年々業績が悪化し、歯止めがかかる兆しがありません。会社の帳簿を見ていた母は、そのことを誰よりも分かっていたのです。

 

そんな状況下、鈴木さんがまず取り組んだことが、工場の整理・整頓です。当時の工場内は、乱雑に道具や材料が置かれていて、どこに何があるか分からない状態でした。

 

 

「これでは良いものはつくれない。」

そう考えた鈴木さんは、工場内を一人で片づけ、必要ないと思われるものをこっそり処分していったのです。

 

その甲斐あって、工場内はみるみる片付いていきます。工場がすっきりしたのはいいとして、勝手に道具を動かされたベテラン工員たちは面白くありません。怒鳴られることもしばしばだったそうですが、「このままじゃあ会社がダメになってしまう」という不安感にさいなまされていた鈴木さんは、お構いなしに整理整頓を進めていきました。

 

 現在、スズキ機工には、工場の整理・整頓に定評がある企業として、多くの工場見学者が訪れますが、これは、鈴木さんのこの時の止むにやまれる行動によって生まれたものです。同時に、持ち前の営業力と人脈を活かし、食品会社など、従来の一斗缶以外の取引先を徐々に開拓していきます。

 

 

利益が出ない、人間関係が築けない

 

 そんなある時、思いもよらない事態に直面します。主力の社員を抱き込んだある取引先の企みによって、4000万円の貸し倒れを余儀なくされてしまったのです。年商1億円の企業にとってこの額は致命的。「もうだめか」と弱気になった鈴木さんに、「お父さんと私がつくった会社なんだから、失いものなんてなにもないよ」とねぎらう母。その言葉に、鈴木さんはベッドの上で号泣したそうです。

 

 試練はまだ終わりません。父に代わって社長に就任し、離脱した社員の分も自らが補おうと「昼は営業、朝と晩は設計の勉強」の多忙な毎日を送り、孤軍奮闘する鈴木さんですが、それを理解しようとしない社員が少なからず現れたのです。

「社長が突然、急ぎの仕事を入れてきて困っている」――そう反発してあからさまなサボタージュに出るスタッフたち。鈴木さんにとっては思ってもみないことでした。

 

 その頃から鈴木さんにある疑念が芽生えます。

「スタッフとの付き合い方が根本的に間違っていたのではないか?」

 どんなに頑張っても思うように利益が出ない。しかもスタッフとの人間関係も築けない。悶々と悩む中で、二つの転機が訪れます。

 

 

 一つは一冊の本との出会い。

 「会社とは、社員とその家族の安定した暮らしを第一に考え、目的と使命を明確にして社員と共有し、そのうえで具体的な戦略を立てることが重要だ」と説いた『経営計画書の作り方』(吉田土著)との出会いです。

「自分が誰にも負けないくらい努力すれば、背中を見た社員たちはついてきてくれる」――それまでは、こう考えていた鈴木さんですが、この本との出会いによって、覚醒します。思いは言葉や文章で明確にしないと伝わらない、ということに気付いたのです。

 そして2011年、創業37年目にして、これまでの数限りない反省を詰め込んだ経営計画書を作成しました。

 

 毎年更新されるという実際の経営計画書を見てみると、数値目標や行動目標が実に具体的に記されています。社員20人に満たない企業で、ここまで明確な経営計画を策定している企業は珍しいのではないでしょうか。

 

 さらに、経営計画書の作成と同時期に起こったある出来事が、もう一つのターニング・ポイントとなります。片道2時間半かけて通ったある大企業で、渾身の提案をしながら結局は採用されなかった自分の図面が、他のメーカーに無断で転用されてしまったのです。

 

 帰路の車中で、悔しさを堪えながら原因を考え抜いた鈴木さんが至った結論は極めてシンプルなものでした。つまり、訪れる回数に限度がある遠方の顧客と真の意味での信頼関係を築くことは難しい。なら、頻繁に訪問することができる顧客を重視すべきだということ。

その結果、現在のスズキ機工の経営計画書には、「クルマで一時間以内の顧客との取引に特化する」ことが明記されています。

 

 

オリジナル商品を生み出す異色メーカーへ

 

 これは、経営効率を考えての判断でもありましたが、それ以上の大きな副産物を生む出すことにも繋がります。取引先に頻繁に顔を出し、顧客との頼関係を深めていくと、「こんなことで困っている」「こんなものがあったらいい」という製造現場の本音が聞けるようになってきたのです。

 

 その結果生まれたのが、奇跡の潤滑油と呼ばれ、テレビなどで話題の「ベルハンマー」であり、絶対に絡まない電線「パケットリールシステム」であり、究極の切れ味を持つ「ベルシザー」なのです。

 

 現在、スズキ機工は、アグレッシブな若き経営者のもと、数々のオリジナル商品を開発する異色メーカーとして、注目の存在となっています。その活躍は、人気ビジネス番組「ガイアの夜明け」でも大きく特集されるほどです。

 

 

 今後は「ベツハンマー」などのヒット商品を携え、タイ市場やアメリカ市場への進出も見据えているそうで、これまで以上の活躍が期待されています。

 

 ですが、そこに至るまでには、数々の蹉跌がありました。それは、厳しい状況の中で会社のかじ取りをする全国の経営者、特に親の会社を継いだ2世経営者にとっては決して他人ごととは思えないものばかり。多くの挫折や失敗を経験し、乗り越えてきたからこそ、現在の姿があるのです。

 

 『夢列伝』では、今後も、幾多の壁を乗り越え、「夢」の実現のために挑戦を続ける多くの人々の物語を伝えていきたいと思います。

 

■鈴木豊さんの電子書籍『弱者の戦略』(エーアイ出版発行)は、ここをクリックすると無料で読むことができます。

 

 

この記事を書いた人

エーアイ出版編集長 樫原史朗

 

ビジネス雑誌「月刊BOSS」企画編集部長、キネマ旬報映画総合研究所主任研究員、株式投資サイト「みんなの株式」編集デスクなどを経て、現職。ジャンルを問わず、社会をより良く、面白くするために奮闘努力をする人々のドラマを多くの読者に届けたいと、日々の業務に取り組んでいます。

 

 

 

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