日本の宗教団体が、信者にコロナワクチンに関して発信したメッセージや対応などの紹介。

日本の宗教界は新型コロナウイルスのワクチン接種をどう考えているか

 

 

【日本の状況】
 日本の宗教界を見渡すと、神道、伝統仏教、新宗教を含めて、飲食物や人工妊娠中絶に厳しい制限を課すところはほとんどなく、ワクチン接種が教義に抵触する可能性がないためか、接種の是非は議論の対象になっていない
 新型コロナウイルス感染症の終息と平常通りの活動再開をワクチン接種や治療薬開発に期待する声や、ワクチン接種に肯定的な動きはいくつかみられた。2021年3月には、創価学会を支持母体とする公明党には、創価学会の座談会や訪問などの対面活動が東京都議選(2021年7月)や衆院選(2021年秋)の選挙活動に欠かせないため、選挙戦のためにワクチン接種を進めたい様子がうかがえた
 途上国にワクチンを安定供給する国際的な仕組み「COVAX」への参加や支援は、池田大作創価学会インタナショナル会長(創価学会名誉会長)の名前で発表された「SGIの日」記念提言(2021年1月)や、立正佼成会とカトリックの在家運動体「聖エジディオ共同体」が発表した「アフリカのための共同アピール」(2021年6月)で呼びかけられた。
 立正佼成会(本部・東京都杉並区)や浄土宗大本山増上寺(東京都港区)は、教団施設を自治体の接種会場として提供した浄土真宗本願寺派や真宗大谷派の宗務所では、職員のワクチン接種時に特別有給休暇制度を導入した。地域と密着した寺院では、パソコンやスマートフォンが苦手な高齢者のためにワクチン接種の予約代行をするところもあった
 ワクチン接種が進んだ2021年秋には、接種を行事参加への条件とする寺院も出始めた。浄土宗大本山増上寺は、11月上旬に実施する檀信徒対象の五重相伝会(浄土宗の教えを5つの順序で伝える法会)の入行条件を、10月末までに2回のワクチン接種を終えていることとした真言宗各派総大本山会は、2022年1月上旬に修する勧修寺流(金剛界)後七日御修法への出仕関係者に事前のワクチン接種を要望した
 だが日本でも懸念が広がっていたワクチンの安全性や有効性、人々の不安をあおるような情報に関して、宗教界からの情報発信は少ない。そのなかで、錯綜する情報に戸惑う信者のために発したと思われる教団や教団関係者側のメッセージを集めてみた(宗派・教派設立順)。

天台宗
 天台宗の檀信徒向け教化紙『天台ジャーナル』(2021年3月1日号)のコラムでは、通常ならば使用可能まで何十年もかかるワクチンが1年足らずで使用できるようになったことに不安を覚えるのは無理もないと、ワクチン接種に躊躇する人の気持ちに理解を示している。副反応が心配なのだろうかと推察したコラム執筆者は、「副反応は出るが、さほど心配するほどではない」という英米で勤務する日本人医師や看護師の話やイスラエルでの副反応は0.2%台という数値を挙げながら、「感染を抑える効果を求めるか、安全性を第一とするか、難しい選択だが、日本はもとより世界のコロナ禍収束のためには一人でも多くの方の接種が望ましいのではないか」と結んでいる。

浄土真宗本願寺派
 浄土真宗本願寺派の門信徒向けの新聞『本願寺時報』(2021年1月10日号)には、「米ファイザー社のワクチンが95%有効と発表されていますが、本当に安全なのでしょうか。教えてください」という新型コロナウイルスのワクチンの安全性についての質問に対する「西本願寺医師の会」会員である上野富雄・川崎医科大学教授(門徒)の回答が掲載された。
 回答では、これまでアレルギー反応を起こした経験のある数名に血圧の急低下を伴うアナフィラキシー(類似超過敏反応)のような反応が見られたこと、この反応は今回のワクチンだけでなくインフルエンザワクチンでも報告があること、副作用は接種直後だけでなく、長期的に影響が出ることもあり得るので、安全に関しては絶対安心とは言い切れないこと、などを丁寧に説明している。情報を提示したうえで、「そうした危険性と予防効果を考えて打つかどうかを個人でも判断する必要があります」と自身による判断を促している。

大本
 大本では、2021年8月に京都府亀岡市で行われた大祭の挨拶で、出口紅教主がワクチンについて言及した。出口教主は北陸大学薬学部で東洋医学などを学び、亀岡市内数校の学校薬剤師を務めていた2001年に教主の後継者に選ばれた、医療の専門家でもある。
「従来と異なり今回のワクチンはウイルスの遺伝情報の一部を使って作られ、治験が継続されるなか、緊急事態のための特例として承認されたもので、短期の副反応はある程度わかっているが、長期の影響への不安が拭えない」と懸念を示した。また、「接種はあくまでも強制するものでもされるものでもなく、本人の意思に従って判断するものとされるが、接種をしたくない人たちへの同調圧力、差別、行動制限を求めるような風潮を懸念している」と述べ、感染対策を徹底し、正しい食事と適度な運動、十分な睡眠、土、松、梅干しや梅肉エキスの力で免疫力を高めつつ、神に真剣に祈ることが大切だと教示した
 ちなみに大本の2人の教祖のうちの1人である出口王仁三郎(聖師)は健康に関する教示も多く、「たいがいの病気は松と土と水さえあったらなおるものである」と述べている(ただし、水は井戸水に限り、土も大本の土のように粘りけのある土でなくてはならない)。

神慈秀明会~NPO法人秀明自然農法ネットワーク
 世界救世教から独立した神慈秀明会は、世界救世教の教祖・岡田茂吉の教えを忠実に受け継いでいる。岡田が説いた自然農法は「秀明自然農法」という名に変わったが、「浄霊」「美による感化」と並んで神慈秀明会が取り組んでいる3つの芸術活動のうちの1つである。
 神慈秀明会が2003年に設立した「NPO法人秀明自然農法ネットワーク(SNS)」は、自然農法の普及や環境保全などの取り組みを行っている。このNPO法人のサイトのトップページには「新着ブログ一覧」があり、ブログのタイトルをクリックすると閲覧できるようになっている。ここにタイトルが掲載されるのは、4つの「SNS公式ブログ」と3つの「生産者のブログ」である。2021年7月から9月に掲載されたタイトル13本(重複を除く)中2本以外は、北陸で秀明自然農法を実践している生産者の「晴耕雨書 農楽里日記」というブログであった。
 2021年7月5日付のブログでは、ワクチンの効能として「スパイクタンパク質を周りの人にまき散らす」「3年から5年かけて免疫機能が落ちてきて、いろんな病気にかかり易くなる」「生殖機能を攻撃されて、最悪不妊の原因になる」などを列挙し、「自然農法の食べ物にはワクチンで入れたものを出す効果がある」と自然農法を称賛している
 7月17日付のタイトルは「今回の新型コロナ騒動詐欺とワクチンの正体」である。スペインの医療研究チームがファイザー製ワクチンの分析をして酸化グラフェンが99.99%以上とわかったという。ここから筆者は、下記のような疑問(一部抜粋)が解けたとし、「メディアはアルコールでこの酸化グラフェンが排泄されてコロナ騒動が治まるのを嫌って飲食店いじめをやっているとしか思えません」など、その答えも記している。
・なぜワクチンを打った人は血栓が出来るのか
・なぜワクチンを打った人の体に磁石がくっつくのか
・なぜ新型コロナ騒動は武漢から始まったのか
・なぜ緊急事態宣言は飲食店ばかり狙う打ちされアルコールが禁止なのか(原文ママ)
 7月22日付のブログ「ワクチンを打った後の解毒」では、ワクチンを接種してしまった人の対応法について記している。酸化グラフェンを体外に排泄するには「5-ALA」などが良い、日本酒、甘酒は「5-ALA」を多く含むので、「ワクチンを打った人にはぜひ、日本酒、お酒が苦手な人には甘酒を勧めたら良いと思います」と述べている。


 

幸福の科学
 「幸福の科学」の大川隆法総裁は、ウイルス感染には「憑依の原理と同じ原理が働く」ため、「とくに恐怖心の強いタイプの人は憑依されやすい」と法話で説いている。そこで感染を防ぐために、明るく積極的な心や強い信仰心をもつことを勧めるほか、大川総裁の法力が込められた法話、書籍、楽曲、祈願などにはウイルスを撃墜する力があるとして、さまざまなものを紹介している。楽曲としては、大川総裁が作曲した「THE THUNDER (ザ・サンダー) -コロナウィルス撃退曲-」(CD)、祈願としては、「勇気の霊的ワクチン」である「コロナ・ワクチン副反応抑止祈願」などがある。
 この論調は幸福の科学出版発行の月刊誌『The Liberty』(2021年4月号)掲載の「コロナワクチンの幻想」などの特集でも確認できる。6830人の医者を対象に実施された調査では、ワクチンを「受けたくない」が30%(「受けたい」35%、「わからない」35%)で、接種しない理由は「安全性、有効性が十分に検証されていない」「有害事象(副作用)が怖い」だった、米ファイザー元副社長であるマイケル・イードン博士は「危険極まりない」と公然と批判している、などワクチンへの疑念を紹介している。そのうえで、「コロナワクチンは当てにならない」「『オリゴ糖』を摂ればコロナは治る」などの専門家の意見に続いて、大川総裁の書籍や楽曲CDを市民や医療施設に届けたところ感染が収まった事例を紹介し、「コロナワクチンに期待できない今、信仰心を持つことで免疫力を高め、コロナを乗り越える重要性は増すばかりだ」と締めくくっている
 また、大川総裁が創立し、党総裁を務める幸福実現党は、ワクチン接種証明書(いわゆるワクチンパスポート)についても、①感染症対策の効果に疑念がある、②基本的人権が侵害される、③全体主義への道となる、などの理由で反対している。

 

ワクチンについての考え方は異なるが、それぞれが信者や人々のために真剣に考えてワクチンへの対処方法を述べている。真偽のほどがわからない情報が無数あるなかで、自身が正しいと思う情報を選びとり、それを信じていくしかないのだろう。その姿は、ある意味、宗教や信心と通じるものがある。

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