ペットボトル入りのミネラルウォーターに、自然の性ホルモンに似た振る舞いをする化学物質が溶け出し、生体に影響を与える可能性があるという研究結果が発表された。世界中の研究室で使われる実験器具からも、プラスチック添加物が溶け出し、実験結果に影響を及ぼしている可能性があるという。

ポリカーボネート製の水筒については、健康に害を与える可能性のある物質が溶け出すという懸念が報道されてきたが、やっかいな問題はほかにもあるかもしれない。日常的に使われているプラスチック容器だ。

 

ボトルに入れて商品として販売されているミネラルウォーターを対象にドイツで行なわれた研究で、自然の性ホルモンに似た振る舞いをする化学物質による汚染が発見された。この水でカタツムリを育てたところ、成長が極端に速かった。これは化学物質の活性を示す危険な徴候だ。プラスチックボトルを使っているブランドの汚染レベルがガラスボトルと比べて2倍だったことは、プラスチックに原因があることを示唆している。

 

プラスチックの耐久性や弾力性を高めるために添加される化学物質には、実験室でのテストで、内分泌攪乱効果があることが分かっている。

プラスチック添加物で最もよく知られているのはビスフェノールAだ。プラスチックを壊れにくくするために添加されるビスフェノールAは、動物のホルモン分泌を攪乱する効果があり、人間にも影響を与える可能性があるとして盛んに報道された。しかし、タンパク質その他の生体物質に影響を与える、いわゆる生体活性を持つプラスチック添加物は何十種類もある。これらの添加物は、静電気の帯電を防止したり、べたつきや細菌の定着を軽減したりするために使用されるが、タンパク質と相互に作用することや、食品容器から内容物へと浸出することが明らかになったものも多い。

 

先進国の平均的な人の体には、こうした環境ホルモン(内分泌攪乱物質)と呼ばれる残留物質が大量に蓄積しているとされる。研究によると、完全に解明されているわけではないが、影響はあるという。胎児期に環境ホルモンに曝されると、男子の生殖能力が減少し、女子の思春期が早く始まるとされている。影響は後の世代にまで残るかもしれない。

 

空気汚染やパーソナルケア製品、食品添加物など、すでに明らかになっている汚染源以外に、食品容器のプラスチックからも環境ホルモンが人体に入り込んでいるかどうかは分かっていない。しかし、『Environmental Science and Pollution Research』に発表された今回の研究は、少なくとも部分的には容器にも問題があることを示唆している。

 

一方、これらの反応性の強い化学物質は、世界中の研究室で使われているプラスチック製の実験用具から容易に溶け出して実験結果に影響を及ぼし、基礎的な生物学研究から薬品開発まで、あらゆる研究の過程を汚染している可能性がある(研究者たちは実験室の中で、ピペットその他の使い捨て器具を1日に何千個も使うことがあり、プラスチックを使わずに済ますことは不可能だ)。

2008年11月7日付け『Science』誌に、そうした懸念を指摘する論文が掲載された。執筆者たちは、パーキンソン病治療薬のターゲットになる酵素の研究中に、2種類のプラスチック添加物によって結果が歪められていることを発見した。

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