直木賞作家が2年かけた比類なき物語!! | 書を捨てず 町へ出よう!

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本読みながら旅する思考の記録

『跳ぶ男』青山文平
主人公は、貧しい小藩の能役者を勤める役目を担う家柄の長男として生まれ、そして見棄てられた若者です。物語は、その若者が能を極めていく成功物語かと思えば、そうではなく、失くした大切な人の遺したものを探し、その志を繋ぐというものでした。



能というテーマと比類なき文章の力で、読み進める後半から能の地謡や囃子が其処此処で響き、心捉えて離しませんでした。
夢幻能の世界を、主人公の身をもって現し、まさにこの物語そのものが能の舞台であり、主人公こそがシテなのだと最後に感じ入りました。主人公は、死者を葬る場所を自分を生かす住処とし、失くした大切な存在を自分に宿らせ往き来し、問いかけ続けます。
そして、藩主の身代わりとなって、貧しい藩を少しでもよくするために選んだ驚くべき行動。
その結末を迎えるにあたっても、夢幻能のシテかと思えば、そうかとすんなり受け入れることができました。

本の中に出てきますが、
まさに「言葉で汚すのは許されぬ」舞台でした。