『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』 新潮社 | 象の夢を見たことはない

『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』 新潮社

野次馬根性、レポーターの記者根性は、動機や傲慢さ、無神経さはどうあれ、一定の成果をあげる。身の上話を聞いてほしい人もいるということだ。


作者・石井光太とそれぞれの地域、場所で生活している人々との会話について、訳し方と記述の仕方に作為が見える。

そこで、彼がだいたいどんな意識でこれを書いているのかはわかる。

彼の目を通して書かれたものなので、会話相手の感情や、実際にそこであった出来事の印象は、人によって、書かれているモノとはまったくとらえかたが違うものとなる可能性がかなり大きい。

そういう点をとりあえず差し引くことを考えて読まないといけないのだが、彼の意識で現実がどう捻じ曲がっているのか、文章からは判別不能で、虚偽の分離が不可、お手上げだったりもする。


読んでるうちに、バックパッカーによくある手合いの身勝手さや傲慢さが見えてくるので、読み進むうちに気分が悪くなってきたのだが、それは自分も同じ穴の狢だからかもしれない。


そういった意味で、なかなか読むのが手ごわい本である。