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あい♥のブログ

ポケモンとガルフレが大好きな大学生が、気ままに更新する、愛がいっぱいのブログです♥

WONDER 第一話は下のリンクからどうぞ!

「WONDER」--序。「始まりの快音

それでは、本編です!

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聖櫻学園の職員室。
野球部監督を兼任する長谷教諭の元を、事務員が訪ねて来た。
「長谷先生、地元の新聞社数社から選手の取材申し込みが来ていますが、いかがなさいますか?」
「・・そうですか。検討して折り返します」
「お願いします」
職員室を出て行く事務員の背中を見送りながら、長谷は腕組みをした。
「来たか。さて、どうしたものか・・」
「長谷先生、うちのクラスの春賀の事でしょうか?」
近くで会話を耳にしていた小林が長谷に聞く。
「おそらく、それもあるでしょうね」
「生徒達の間でも噂になっています」
「そうでしょう。あれほどの活躍を見せつけられたのですから」
「春賀は女生徒です」
「わかっています。それを許可したのも私です」
「先生のご決断・・私は指示します」
「ええ。でも、まさかここまで活躍するとは想像もしていませんでした」
「そうですね。素晴らしい活躍だと思います。春賀だけでなく、他の生徒達も、です」
「ええ。、良い試合をしています。出来れば、このまま続けさせてやりたいものです」
「そうですね・・」
そのまま、ふたりは暫く沈黙した。
職員室の窓から僅かな風が吹き込み、ふわっと、小林の髪を梳く。
小林は片手で髪を直しながら、
「学園長は、なんと仰っているのでしょうか・・?」と、長谷に尋ねた。
「学園長は・・」
長谷は窓の外に目を遣りながら答えた。
「学園長は、賛成してくれています。そういう事がお好きな方ですから。」
「そうですか」
「これから、学園長のところに行ってきます」
長谷はそう言い残して、職員室を出て行った。


同じ頃。
視察の為に訪れていた地方球場に近いホテルの一室で、利野は聖櫻と南陽の試合のビデオを見ていた。
傍らにひとりの男がいる。名前は吉川 健(よしかわ けん)。同じ球団のスカウトである。
吉川は利野とは別行動で、別の球場での試合を視察していた。
ホテルで合流したふたりは、それぞれの注目選手についての情報交換をしていた。
「吉川君。この選手だ」
「随分と華奢な体格ですね」
「それはいい。それより、ここを見てくれ」
ビデオは、春賀が盗塁をするシーンを映してした。
「どう思う?このスタートのタイミング」
と利野が聞く。
「うーん。早いですね。これはギャンブルスタートだと思いますが」
「そう思うか」
「ええ。あまり参考にならないのでは?」
「そうか。それじゃ、これも見てくれ」
利野は、その試合でのその他の春賀の盗塁シーンを続けて映してみせた。
「どう思う、吉川くん」
「これは・・。なにか、モーションでも盗んでいるんでしょうか?」
「そう思うか」
「はい。そうでなければ、ここまで完璧なタイミングでスタートは切れないでしょう」
「もしそうなら、何故、聖櫻の他の選手は盗塁をしないんだ?」
「あ、そうですね。モーションに癖があるなら、それは情報共有されてしかるべきですね」
「春賀だけだ」
利野は更に、別なシーンを映した。
初回の先制のシーンだ。
「出会い頭ですかね」
春賀が比嘉の初球を見事に外野に運んだシーンである。
「そこはいい。その後を見てくれ」
画像は春賀が二塁ベースを蹴って三塁に向かうシーンを映す。
「暴走ですね・・えっ?」
「俺も暴走だと思ったよ。でも、この結果だ」
「偶然と言うか、運がいいんでしょうか?」
利野はまた、別なシーンを映す。
スクイズ崩れで聖櫻が得点するシーンだ。
空振りする新城、後逸する捕手、そして、ホームインする春賀。
「サイン違いか。それにしても、またしてもこの結果だ」
「偶然にしては・・重なりますね」
「ああ。それから、これも見てくれ」
利野は次に、別なシーンを映した。
新城が終盤に2失点した後のシーンである。
南陽の攻撃はツーアウト1、3塁。2点を返した後の攻撃で、ここで点を取れば試合はわからなくなる。
「ここだ」と利野が言う。
南陽の打者が打球を外野に運ぶ。快打である。ほぼ、右中間の真ん中へライナー性の当たりが飛ぶ。
だが、その打球の先には春賀の姿があり、ギリギリではあるものの、その打球を捕球し、アウトにしていた。
「これは・・!」
「ああ。何とも言えないがね。まるで、打球がそこに飛ぶのを予測していたかの様な動きに見える」
「確かに・・」
「どうだ。君はこれを見て何を感じた?」
「恐ろしく、カンが良いとしか・・思えません」
「ここまで来ると、もはや偶然とは言いがたい。何故こんな動きが出来るのか、非常に興味深いよ」
「そうですね」
「どうだ。面白い選手だと思わないか?」
利野はそう言いながら、今度は春賀の打席のシーンを映した。
「このバットコントロールも中々なものだ」
「ええ、確かに」
「これは逸材かもしれない。この選手は何かを持っている」
「マークすべきですね」
「ああ。そう思うよ。それに」
「それに?」
「続きがあるんだ」
「続き?まだなにかあるんですか?」
「ああ。この選手・・春賀光は、女子生徒であるという噂がある」
「えっ!!」
「驚いたか?」
「それは驚きですよ。これはもしかして・・」
「ああ、『規則改訂後の』初の甲子園に出場する女子選手になる可能性がある」


場所は再び聖櫻学園。
学園長室の扉を、長谷が静かに叩いた。
「学園長、長谷です。入ります」
「ああ、入りたまえ」
長谷は扉を叩き、学園長室に入った。
途端に、学園長のレックス・サンダースが両手を大きく広げ、満面の笑顔で長谷に抱き付いてきた。
「おお、長谷先生。よくやってくれた!」
「が、学延長・・?」
「君の野球部だよ。あの強豪を破ったそうじゃないか」
「ええ。今日はその事で、ご相談にあがりました」
「なんの相談だ? 甲子園に行く為の費用か? そんなものは心配する必要はない」
「そ、それは早すぎます。そうじゃなくて・・」
「うん? 何か他に心配事でもあるのか?」
「選手の事です。以前にも話しましたが、選手の一人、春賀の事です」
「おお、春賀君か。確か、小林先生のクラスの子だったな。可愛らしい女子生徒の」
「ええ」
「春賀君の活躍は、もう大分評判になっているよ。この学園の宣伝効果も抜群だ」
「それはそうですが・・」
「なにか、問題でもあるのか? ああ、あの美少女を五分刈りにさせた事かな。あれは批判されても仕方ないぞ」
「そ、そうじゃなくて・・あれ?」
「どうしたんだ?」
「いや、その。。規則が」
「規則がどうしたんだ?」
「何か、規則に問題があった様な気がしたのですが。。なんだったか、思い出せません」
「そうか。それより、これから学園を上げて君の野球部をバックアップしよう」
「はい」
「是非とも、甲子園を掴み取ってくれ。あの春賀君に、甲子園の土を踏ませるんだ」
「わかりました。全力をつくします」
「期待しているぞ、長谷先生」


同時刻。
海を見下ろす小高い丘の上に、陽介が佇んでいた。
満天の星空。下弦の月の光が、妖しく陽介の頬を照らしている。
胸の真ん中で印を結び、何かを唱えていた陽介の周りに、さぁっと、風が渦を巻いた。
風は渦の中心で小さな光の粒になり、それはやがて、一羽の小鳥の姿になった。
「お帰り、ウインド」
その小鳥に向かって陽介が囁く。
--ヨウスケ、終ったかい?
ウインドと呼ばれた小鳥が囀る様に答える。
「ああ、もう大丈夫だ」
--過去を『ひねって』きたんだね
「ああ。まあ、これくらいなら問題ないさ。世界には無限の可能性がある。そのひとつを、ここの時空に『繋いだ』だけだからね」
陽介はそう言うと満面の笑顔を見せ、指をパチンと鳴らした。
「とにかく、家に帰ろう。父さんもひかりも待っているだろうから」

「WONDER」--12。「フィーバー」に続く